選手や関係者にとって、この敗戦は大変悔しいことだったと察しますが、考え方によっては、「急がば廻れ!」で、結果的には、幸いだったのではないでしょうか?
さてきょうは、一昨日(26日)、中東ヨルダンの首都アンマン(キング・アブドラ国際スタジアム)にて行われた、FIFA・W杯サッカーブラジル2014、アジア地区最終予選B組、ヨルダン代表対日本代表戦の反省と課題について語り合いたいと思います。
表題の「もめる門には福きたる」は、TV(フジテレビ)のドラマのタイトルを捩(もじ)ったものです。
試合の結果は1−2でサムライブルーはヨルダンに負け、W杯出場決定は、6月4日の対オーストラリア戦(ホーム)か同月11日(または10日)の対イラク戦(アウェー)までお預けになりました。「福きたる」と申しましたのは、もし今回アッサリと勝って出場権を得ていたら、この最後の2戦が消化試合になり、今回の試合でも露呈していた日本サッカーの弱点もそれほど意識しないまま、6月にブラジルで開催されるコンフェデレーションカップの大会まで(緊迫ムードなしに)時間だけ経過してしまうのではという懸念があったコト。結果的には負けたことによりその心配は、同じ6月に大事な試合(予選と大会)が重なることで、これらの課題を一挙に解消できる可能
性が出てきたんおではと考えたからです。
少しややこしい説明になってしまいましたが、一番恐れているのは、出場権獲得という目的を果たした、という、安堵感と弛緩作用による楽観ムードが日本サッカー界に流れるコトです。それに、コンフェデ杯のための特別な準備もそれほど意識せず、地元での対オーストラリア戦に勝って、その余勢でもって大会に乗り込めるのではというコトです。これらは、「一石二鳥」でできるのだという意味がタイトルに含まれているのです。
この試合は、少し皮肉っぽい表現になりますが「日本サッカーらしさ」が良い面でも悪い面でも露呈していました。
良い面では、長谷部からの縦パスを清武はカラダの向きとは反対(回転しながら)にワンタッチで、ゴール中央に位置していた香川に見事なパス、香川はマークしていた相手DFをスピードで振り切り、右足でクリーンシュートを決めたコト。悪コンディションのピッチでありながら、得意のパスを駆使してゲームを支配していたコト。アタッカーの前田、岡崎、香川、清武等が忠実に守備面でも使命を果たしていたコト。DF陣のサイドバック内田と酒井高徳、センターバックの今野も味方の攻撃に参加していたコト。等々。
悪い面では、セットプレーのコーナーキックで、しかも前半のタイムアップ寸前、相手にフリーでヘディングシュートの先制点を許したコト。ディフェンス面で、酒井のミスで相手にボールを奪われ、右サイドのタッチライン際にいた相手FWにボールが渡り、酒井の後方にいた吉田が横からタックルに入る瞬間、ドリブルで振り切られ、そのままゴール前まで持ち込まれ、GK川島が前に出る瞬間、左足でシュートを決められ追加点(2点目)を許してしまったコト。攻撃面では、何度もゴール前に持ち込みながら、味方にクロスしたり、プルバックを繰り返し「シュートという意識」が欠けていたコト。等々。
ザッケローニ監督は選手に、「得点する気がないのか!」と叱咤したそうですが、私自身も見ていて、この点でハガユイ気分にさせられていました。
個人的にはあまり言いたくないのですが、FWワントップの前田は前半22分長谷部の後方からのパスを振り向きながらヘッドシュート、ボールはバーに当たって外にでた不運もありましたが、下がって守ったり香川や岡崎にスペースを空けるプレーをしていたものの肝心のシュートに絡むプレーがほとんどなかったのはどうしてか?
岡崎と清武も香川の脇役のような感じで、得点に絡むプレーがいつもの試合より少なかったのはどうしてか? 香川も事前のカナダ戦での反省も含めて、何とか得点に絡むプレーをしようという意欲は感じとれましたが、味方の援護が少なく、唯一得点に結びついたときのプレー(横にハーフナー、後に清武、長谷部が上手く絡んでいた)のみその成果が現われていたように思います。
左サイドバックの酒井も長友のように積極的に左サイドを抉(えぐ)るようなドリブルでゴールライン際まで持ち込んだり、右サイドから流れてきたパスを、(シュートできる位置にいながら)シュートせずゴール前に混戦状態で待機する味方にクロスしたりプルバックで、ダイレクトにゴールに向けてシュートしないのには苛立ちを感じました。あそこでシュートあるいはシュートのようなクロスをすれば、得点にならなくとも、ラトビア戦で見せた、内田のシュート気味のクロスを岡崎がボールを足先で掠って得点したように決めたり、相手DFがカラダに当ててオーンゴールしたり、GKが
弾いたコボレ球をプッシュして決めるコトができる可能性があるはず。シュートしなければその可能性はないということです。
ボランチの長谷部にしても遠藤にしても、もっと積極的にミドルシュートする気概がなければ、相手のDF陣はラインを下げて(日本の攻撃空間をさらにコンパクトに狭めて)、キレイにゴールするのは至難の技。
日本サッカーはバルサのようなボールポゼッションに陶酔しすぎて、肝心な「ゴール」という快感を忘れたかのようなパスをゴール前まで続けているような様である。ザック監督が苛立つのも理解できる。
ヨルダンの2得点は、ロンドン五輪の対メキシコ戦と対韓国戦の失点を彷彿したようであった。メキシコ戦で先取点をあげながら、CKでヘッドで決められ、GKミスパス(手でスロー)を拾われ、シュートを決められていた。その後、相手のFWに吉田がドリブルで交わされシュートを決められている。韓国戦でも吉田が相手のFWにドリブルで振り切られ得点された。この一連のゴールから、吉田のプレーに守備面での弱点が浮き彫りされている。吉田は前には強さがあって素晴らしい面があるが、彼自身の左側の脚と股関節が硬くて柔軟さが欠けており、そこを突かれると、意外な脆さ(タックルが上手くない)を露呈している。その原因は胴体の動きと重心移動(股関節のとらえ)に問題があるようです。
試合における選手の顔色というか表情を見ていて、猛暑の中東で試合しているのに、まるで寒冷地での試合かのように、青褪(あおざ)めて震えているかのような様子には驚きました。遠藤のPKにしても、彼の特徴かもしれませんが、なにか冷めたような感じで、ここで決めるんだという迫力がまったく感じられませんでした。案の定、GKから見え見えのキックで弾かれ同点弾を決められませんでした。 後半13分長谷部と遠藤の足が止まった(私のノートにそう記録されている)。その後すぐ、後半15分相手のFWの長い単身ドリブルからのシュートで2点目を決められている。
私がこのブログで何度も言ってきている「泥臭いシュート」は、日本代表のサッカーのように、長友、内田、あるいは酒井高徳、酒井宏樹、駒野といったサイドバックがクロスして頭や足でキレイにシュートして決めるだけでは、相手が必死に守ったらそう簡単に打開できない。相手のディフェンスを引き出すためにも、あらゆる距離あらゆる角度からでもシュートする気概と習慣がなければ、「泥臭いシュートやゴール」はありえない。
現在のようにFWやMFのアタッカーが必死になって守備に力を入れる割合を割いても、攻撃面の力を増やせるようにしなければ、いつまでたっても同じ課題が継続されていくであろうと思います。それは私たちのカラダと同じで、右脇を締めたら同時に左脇を緩めないと、カラダは硬直して、しなやかさも柔らかさもパワーも発揮できないコトと同じです。その点を監督をはじめコーチ陣が戦術面で、特に気を配らねばならない大事なコトではないかと思います。それにはなお一層ディフェンス陣1人1人の技術的能力と個人戦術の能力向上させ強化するコトが不可欠です。それに、今回の試合前に問題があった選手の健康状態やケガに対するケアも同様に気を配らねばなりません。
残る6月までの2ヶ月間でどれだけ課題を解消できるか、強化委員会と監督を中心とするコーチングスタッフの手腕による戦略が期待されます。
グラシアス! アスタ・ラ・プロクシマ!