Japan Soccer 50年

2013年2月4日月曜日

雑誌『サッカー批評』を読んで感じた日本人の完璧主義 (4)

こんにちは! 蜻蛉です。アッという間に2月、早いですね。残念なことに、日本のお家芸であるはずの柔道界の指導者の暴力行為が、クローズアップされています。

私はこのブログで、柔道の礼儀と礼節が守られていないコトと、柔道の本来の「らしさ」が失われているコトを指摘しました。その原因は講道館と日本柔道界の姿勢にあるコトも述べました。

柔道や武道の稽古は、対人関係を円滑にし、危険回避をはじめとする状況判断の能力を向上させる、という2つの面を持っているのです。そのためには、常に自分をニュートラルな状態に置いて、相手を感じ、それにもっとも適した身体反応ができるように訓練するです。対人関係においても、まず相手が何をしたいのかを感じる能力があれば、状況に応じて適切な対処ができる。つまり「人の動き(心身共に)が読める」ようになるのです。

そして自分にとって危険な状況、不利な状況を察知できる能力が向上し、的確な判断ができるようになり、追い込まれた状況から逆転する能力も身についてくる。同時にさまざまな状況を予測できるようになる。身体が敏感なアンテナとして機能すれば、動物的な“カン”も働くようになるのです。

この大事なコトを知らない?で指導している指導者、それに指導者の資格を、五輪でメダルを獲得したからといって、安易に与えている柔道界の体質に重大な要因があるのではないでしょうか。

いじめの問題や体罰の問題を関係者を処罰するだけでは、何も解決しないし、逆にますます深みにはまっていく、と私はそう感じています。

さて、きょうも雑誌『サッカー批評』(双葉社発行No59)の批評に関して、ディフェンスマスターと呼ばれている栃木SCの松田浩監督が徹底分析した『日本代表の守備はなぜ崩壊したのか?』ポジショニングから見る4失点(対ブラジル戦)の要因を批評されているコトについて話し合いたいと思います。 

先に柔道界の問題と柔道や武道の稽古について述べたコトは、サッカーにとっても重要なコトなので、記載しました。

松田氏はつぎの4つの項目を挙げています。

1.ピンチを招いた要因は守備意識の低さ

2.フリーでシュートを打たせた遠藤と香川のポジショニング 

3.守備に足りないゾーンディフェンスの意識 

4.ブラジルとの差を埋めるために必要なことは

1.では、松田氏は、「フランス戦はよく勝ったという印象。前半は押し込まれたが無得点でゲームを進められたのが一番の勝因だと思います。必然的に守備意識が高まり、うまく守り勝ったのがフランス戦。ザッケローニ監督はブラジル戦の前に『フランス戦のように守り勝つつもりはない』とコメントしていたでしょう。かくして指揮官の宣言どおりブラジル戦の序盤、日本は見事なパスワークでブラジルを自陣に押し込めました」と述べています。

左サイドで長友、香川、本田、遠藤が絡んで何本もパスを回し、相手のペナルティエリア付近までボールを運ぶ。だが、本田がつぎの瞬間にボールを奪われ、そのままカカに渡る。カカは間髪入れずに前線のネイマール目掛けて正確で長いボールを足下に入れる。ネイマールは見事なワンタッチで広大なスペースに抜け出す。ブラジルの最初のカウンターシーンを図解で両チームの選手の位置(ポジション)を示しながら解説しております。

松田氏は、「この場面、僕は日本の戻りが遅いと思う。ブラジルの上がりの方が速い」吉田と内田がネイマールの突破を遅らせているうちに帰陣したのは長谷部と今野の2人だけ、一方ブラジルは後方から4人が駆け上がっている。ネイマールにボールが出た瞬間は2対1の数的優位。でもつぎの場面では4対5の数的不利。どれだけブラジルの上がりが速くて日本の帰陣が遅いかということですよ。

この辺りが、日本はブラジルをチョッと甘く見ていない?と思うのです。ブラジルのカウンターは天下一品なのに」

 この後、松田氏は、「カウンターの局面ではいかに早く十分な数のカラダを帰陣させるか、それだけしかないんです。僕はその意識付けを促すためにD(ペナルティアーク)のポジションの重要性を選手に伝えている」とも述べておられる。

2.では、ブラジルの最初の得点の場面の日本選手のポジションのとり方が的確でないコトを指摘しています。 DF内田のクリアミスが最大の要因あることは間違いないが、問題はそれだけではない」と松田氏は述べています。

「相手のシュートもうまいと思いますよ。でもゾーンディフェンスのポジションをしっかりとっていればシューターにも、その前のパスを出した選手にもアプローチにいけたはずです。内田のミスがなければ、こういうポジション取りの問題が明るみにならないのです」と松田氏は述べています。

3.では、氏は「ゾーンディフェンスの守備時に大事なことは、守備にも行けるし攻撃にも行ける、という意味で中途半端なポジションをとること。(略)序盤は自分たちの攻撃が良くて相手を押し込められていたけれど、まだどうなるか何もわからない状況で、守備の局面でしっかり守備のポジションをとらないのはなぜか、ということです。そう考えると、フランス戦の勝利とブラジル戦の立ち上がりの良さによって、ブラジルを甘くみてしまったのではないかと感じるのです」

「僕が考えるゾーンディフェンスはボールを中心として、その次に見方の位置で決まるのだから、吉田はもっと今野に近づいて間のスペースを埋めないといけない。あるいは、瞬時に長谷部がその穴に飛び込んで埋めるか。吉田はマンツーマンの意識が強いのかなあ。ネイマールは内田に任せればよかったと思うのです」と氏は述べています。

4.「日本代表の強みは、今や細かいパスワークに代表されるコレクティブな攻撃と連動した守備だ。そのいずれかを放棄すれば世界のトップとは渡り合えない。徹底的に攻めるならば、徹底的に守ること。ブラジル戦で見えた収穫と課題がまさにそこにある」と締めくくっています。

(蜻蛉の見解)

 この文章を読んで、ザッケローニ監督が、ブラジル戦前に「フランス戦のように守るつもりはない」というコトをプレスに向かって述べていたとは驚きでした。なんとなく彼の言動をチェックすると、彼自身が日本サッカー界が、ブラジルサッカーに傾倒し過ぎているのでは、というような印象を持っているように感じています。それで彼はブラジルに挑戦状を突きつけたのではないでしょうか。

1の図を見れば、本田がボールを相手に奪われた時点で、遠藤と長友まで攻撃に参加して、2人をカバーしているのが今野と長谷部の2人ですが、その前のスペースをブラジルの4選手が占拠。ハーフラインにネイマール1人に対して吉田と内田ですが、ハーフラインからの自陣はがら空きの状態。「守りをコンパクトにせよ!」というコンセプトを守らず、闇雲に相手の懐に飛び込もうとしている様である。

松田氏が「帰陣して数的有利にせよ!」「Dにて守備網をかけよ!」は守備戦術の鉄則。ゾーンディフェンスを意識するのも、防御ラインを組織化するためで、マンツーマンで守るとパス攻撃に対処できないのだ、というわけです。帰陣させるには、相手のボール保持者に対応する選手のマークの仕方が大事、そこで阻止できなければ、1のように、アッという間に相手のカウンターで押し込まれるコトになる。また、このときのブラジルのバックラインには、松田氏のいうDの位置に3人と少し前に1人がいて、日本の4人で突破するのは容易でない状況。というコトは、ブラジルは日本の攻撃をあらかじめ許して、日本の出方を探りながら、しかも日本のミスに乗じてカウンターをかける、という筋書きができていたのでは、と私は過去30年以上南米サッカーを観戦してきた体験から感じています。

このコトは、松田氏の「まだどうなるか何もわからない状況で、守備の局面でしっかりと守備のポジションをとらないのはなぜか?」の言葉にあるように、日本は無謀に攻め込んだと、非難されても仕方がない。なのに、プレス関係のライターは寛容?に、「攻撃面はまずまずの出来」とか「収穫があった」と記載されている。なんとなく信じられませんね。

守備に関しては、規律が第1ですから、守備戦術の原則とかマークの原則がしっかりと認識されていなければ、絶えず不安定な状況に立たされるのです。その上で、技術とか体力の他に、どのような状況にも対応できるよう、柔軟で強いメンタリティが選手たちに要求されるのです。

4で述べておられるように、なにごとも「徹底する」という姿勢こそ、日本サッカー界に求められる姿だと、と私なりに思っています。そのためにも、このページで私が最初に述べたコトが、高度なサッカーを目指す上で欠かせないのです。

グラシアス! アスタ・ラ・プロクシマ!

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