Japan Soccer 50年

2012年12月17日月曜日

クラブFIFA・W杯サッカー観戦記 (4)


こんにちは! 蜻蛉です。もう半月で正月を迎える‐-‐? 実感が湧きません。南米ペルーに移住して以来、36年ぶりの日本でまる1年(2012年)を過ごすコトができるなんて考えてもいませんでした。

 さてきょうは、クラブW杯準決勝2試合について話し合いたいと思います。試合の結果は、皆さんが既にご承知のように、(12日トヨタ・スタジアム)南米代表のコリンチャンス(ブラジル)がアフリカ代表のアルハアリ(エジプト)に1−0で辛勝、また、(13日横浜国際競技場)欧州代表のチェルシー(イングランド)が北中米カリブ代表モンテレイ(メキシコ)に3−1で圧勝しました。

 南米に住む私が期待していましたコリンチャンスはサッカー王国ブラジルらしからぬ重い出足で、エジプトサッカーのリズムを取り戻したアルハアリにゲームを支配されていました。

しかし、前半(?分)コリンチャンスの左コーナーキック(CK)から中央にはじき返されたボールが、味方を経由して、再び左サイドライン際に位置していたMFドウグラス(CKのキッカー)に渡り、彼は直ぐにゴール前にロビングクロスを入れ、ワントップのストライカーであるゲレーロが後ろに倒れるような格好でヘディングシュートを決めました。

そのシュートに対してGKは、ヘッドの構えからはコースが予測できず、反応が遅れて、ゴールを許してしまいました。しかし、このシュートは、ゲレーロがストライカーであるコトを証明した、難しい体勢でのプレーでした。

この得点を決めたパオロ・ゲレーロはペルー人ですから、広島の佐藤寿人選手と並んで、この大会で私が最も注目していた選手の一人です。

彼は、大惨事で死亡した“アリアンサ・リマ”のGKでペルー代表でもあったホセ・ゴンサレス・ガノーサの甥にあたり、16歳まで同クラブの下部組織でプレー(同期にはドイツのシャルケ04で内田篤人の同僚ジェファーソン・ファルファンもいました)していた頃、ストライカーとして優れた技術と体格に恵まれた素質に惚れ込んだドイツのバイエルン(B)・ミュンヘン(当時同クラブにはアリアンサ出身のペルー人で、現在も同クラブに所属している、クラウディオ・ピサッロが、ストライカーとして活躍していました)に引き抜かれ同クラブのユースでトップを目指しゴールゲッターとして活躍していました。

しかし、当時、トップチームのB・ミュンヘンは世界トップクラスの選手がひしめき合っていて、若い彼はベンチ入りはしたものの、出場チャンスがあまりなかったようで、同じドイツのハンブルガーSVの要望で貸与された後、活躍が認められ、完全移籍。今年の数ヶ月前まで同チームのストライカーとして活躍していました。

ペルー代表としても、今年の南米選手権(コパ・アメリカ)にて得点王に輝き、クラブW杯で世界一を目指すコリンチャンスが、その得点能力に期待して、彼を獲得したのでした。

コリンチャンスでは、ストライカー9番として活躍しはじめた矢先、今月はじめの、同じサンパウロ州の永遠のライバル、サンパウロFCとの対戦でゴールを決めた後膝を痛めこの大会出場が危ぶまれていました。ティティ監督は戦術上ワントップの9番ができるのはゲレーロしかいない、というコトで、出場の可能性を期待して、日本行きのメンバーに登録したのでした。

心配された負傷も予想以上に早く回復し、この試合に間に合ったというわけです。

この試合でゴールを決めましたが、私が知っているゲレーロのプレーとはほど遠い感じがしました。その要因のひとつは、ケガによる練習不足による体重過剰からくる体力不足であり、もうひとつは膝の負傷による再発の怖れで、思いっきりプレーが発揮できないのでは、という問題点が予測されます。

 コリンチャンスは、この虎の子の1点を守り抜き、決勝への進出を決めましたが、おそらく暑い夏の気候のブラジルから真冬のような日本の寒さと時差が影響したのでしょう。動きもプレーの鋭さも余裕もブラジルらしさが影を潜め、対広島戦で雪と寒さで苦しんでいた一方のアルハアリは、一戦を交えたコトで寒さにも慣れ、前の試合とはうって変わり、エジプトらしい柔軟で激しい動きのサッカーのリズムを取り戻し、再三再四ブラジルのDF陣とゴールを脅かしていました。

 コリンチャンスは苦戦に追い込まれながらも、DF陣が崩れず守り抜いた、というコトはチェルシーとの決勝戦に活きてくるであろうか、と感じました。

 チェルシー対モンテレイ戦の前、私はモンテレイのプレーに注目するコトを皆さんに奨めました。おそらく「なぜなのだろうか?」と疑問をもたれたコトでしょう。 

その理由は次のコトからです。その一つは、皆さんが欧州の世界トップクラスのチェルシーに関心をよせているのは当然ですが、日本代表がチェルシーと同じサッカーを目指しているわけではありません。

ですから、日本がW杯で世界と伍して戦うためには、欧州でフランスとブラジルを相手に2連戦しましたように、日本サッカーがより強く、より向上していくためには、世界の強豪との戦いは不可欠です。

この試合はメキシコサッカーのスタイルが日本とよく似ているコトから、モンテレイを仮想日本として観戦すれば、チェルシーのフェルナンド・トーレス、アザール、マタ、オスカル、ダビッド・ルイス、A・コール、ランパートといった名のある選手たちのプレーに気をとらわれず、強豪を相手にするモンテレイ(日本)のプレーを冷静に観察できるのでは、というのがもう一つの理由です。

チェルシーのベニッテス暫定監督はスペイン人で元リバプール(イングランド)の監督でしたが、この大会のために、

「ストライカーのトーレスを活かせる監督は誰が適任か?」

と人選したところ、同じスペイン人で実績もある彼を指名した由来があるのです。

短期間の指導で結果を出すコトを求められていたのですから、リバプール時代のトーレスとスペイン人のマタ、D・ルイスといった監督のコンセプトをよく理解した選手たちを通して、エースストライカーのトーレスを活かす戦略を企てたのです。

それが見事に的中して、トーレスとマタ、それにアザールやD・ルイス、A・コールといった選手たちの活躍を引き出したのでした。

そのコトが前もって分かっていながら、モンテレイのブセティク監督はその対応を怠ったのか、選手自身がチェルシーのアグレッシブな攻撃に戸惑ったのか、それとも、選手が監督の指示に従わなかったのか、その真相は分かりませんが、モンテレイの右サイドの守備は、チェルシーの左サイドからの攻撃に翻弄されていました。

前半17分、チェルシーは左サイドからMFオスカルに縦パスを入れ、彼はパスを受けながら振り向かず、相手を背後からマークさせたままボールをキープしながら後方に戻り、その瞬間後方から走り込んで来たサイドバックA・コールと交差しながらヒールキックでゴールライン方向に落とし、コールはすかさずゴール前でフリーのMFマタにグラウンダーのクロスを入れました。マタは落ち着いてゴール左にシュートを決めて、チェルシーが均衡を破り1−0で先行しました。

その後は、それまでチェルシーのスピード攻撃に戸惑っていたモンテレイですが、時間の経過と共に慣れるに従い、本来のリラックスしたリズムを取り戻していました。
正確で落ち着いたボールコントロールで速いパスを繋ぎ、守っては早いつぶしのインターセプトで互角に戦っていました。前半1−0で終了。

後半に入り開始早々1分、立ち上がりからチェルシーは、弱い右サイドの相手守備を突き、アザールが左サイドから見事なドリブルを駆使して3人の相手DFを交わし、ゴールライン際まで持ち込み、右後方に位置していたトーレスにプルバックで渡し、彼はそのパスを右足でゴールに向けてシュート、ボールは相手DFの足に当たりゴールに吸い込まれ2−0と引き離しました。

束の間の後半3分、チェルシーはトーレスが左サイドからドリブルしながら前の選手に短いパス、それを受けた味方の選手が、交差するようにしながら、足の裏でボールを後方に落とし、トーレスはそれを受けてゴール左手前まで持ち込み、右足のアウトサイドでファーポストの右側にパス、そこに現れたマタがゴール前にクロスしたボールが帰陣してきた選手の足に当たりオウンゴール、アッという間に3−0で試合を決定付けてしまいました。

その後は、チェルシーが少し気を緩めたのか、モンテレイが反撃したのかは分かりませんが、終了間際のアディショナルタイムにて、モンテレイのストライカー、ディ・グリスに右サイドの角度のない位置からシュートを決めらましたが、それで主審のタイムアップの笛が鳴りチェルシーが3−1で勝利、16日コリンチャンスとの王座をかけた決勝戦に進みました。

試合後TVの解説者?「格がちがいましたね!」とコメントしていましたが、本当にそう思いましたか? 結果と見た目の印象ではそう感じたかもしれませんが、私蜻蛉の目にはそうとは映りませんでした。

メキシコの選手は、相手のプレッシャーに対して、日本の選手のようにアッサリと安易にバックパスで逃れるようなプレーをしていましたか? 私の目にはプレッシャーに怖れず、リラックスに相手と向き合い、冷静にプレーしていたように見えました。このプレーは日本代表の選手に限らず、すべての選手が見習う必要があります。そのプレーできてこそ世界のトップクラスの選手たちと互角に戦えるのです。

前にも広島の選手のプレーで指摘しましたように、「リラックス」と「気の抜けた」プレーを混同してしまう意識の虚に問題がありそうです。

「集中せよ!」というコトの意味は、そういう「意識の虚による怠慢とか緩慢なプレーをするな!」というコトです。

 そういう意味からすると、モンテレイの右サイドの選手たちのミスはそのような傾向があったように、感じました。この他にも、最初のウルサン戦で調子が良かったモンテレイは、時差と移動とスタジアムの環境の違いに加え、寒さによる疲れが現れ、それらが原因で、時折集中力を欠く結果にもなっていたように感じました。

 相手をマークする場合、直接ボールをキープする相手へのズレが連鎖的にカバーする味方にも影響してズレてしまうコトがあるようです。

1点目の場合、ボールをキープしていたオスカルの後ろにマークしていた選手が、後方に戻るオスカルと後方から走ってきたA・コールを同時に視野に入れていなかったというプレーに問題があるのです。相手のおスカルは後ろ向きでしたので、危険な状況ではなかったのに、マークする相手の動きに気を取られて、密着し過ぎて、視界が狭くなり、危険な相手が進入してくるのを見逃してしまったところに、そのミスの原因があったのだと思います。

 2点目の場合は、アザールの単身ドリブルに3人の選手が簡単に抜かれ、しかもストライカーのトーレスに誰もマークする選手がいなかったというコトです。

現代サッカーの主流とも言える速いタッチのパスゲームに対してゾーンシフトに慣れた選手たちは、ドリブルで向かってくる選手に、マンツーマンで上手な詰めとタックルができなくなったのでしょうか?アザール、メッシ、ロナルド、ファルカンといった優秀なドリブルの名手に簡単にゴールを許してしまう、という欠点を暴露しているように感じています。

3点目も1点目と同じミスをおかし、トーレスにドリブルで簡単に振り切られて、マタのクロスがオウンゴールになってしまったのです。

 右サイドからの危険な攻撃はまったくなかったと言えるほどでしたから、モンテレイにしてみれば、もし右サイドの選手たちの不手際がなければ、互角に戦えたのではないか、というのが蜻蛉の目で見た感想です。

 明日16日は3位決定戦と世界一を決める試合が予定されています。準決勝の試合から見れば、チェルシーが優勢ですが、南米でのW杯予選にて、2試合単位で、この大会と同じような間隔の日程で試合が行われています。理由はよく分りませんが、2試合続けて、よいコンディションで、試合に勝つのは大変難しいようです。  

それでいくとコリンにもチャンスがありそうです。どちらにせよ、世界一の決定戦に相応しい、勝負だけに拘らない、内容のある試合を両チームに披露してもらいたいですね。

最後に、この試合をコントロールする審判諸氏にも、公平な審判をしてもらいたいと願い、この長い?ページを閉じたいと思います。

以上が蜻蛉のつぶやきです。

グラシアス! アスタ・ラ・プロクシマ

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