Japan Soccer 50年

2012年12月14日金曜日

クラブFIFA・W杯サッカー観戦記 (3)


こんにちは! 蜻蛉です。クラブW杯の5位決定戦と準決勝は、昨日(12日)トヨタ・スタジアム(愛知)で行われ、Jリーグ・チャンピオン広島サンフレッチェがアジア・チャンピオンのウルサン・ヒュンダイ(韓国)に3−2で勝利して5位、南米・チャンピオンのコリンチャンス(ブラジル)はアフリカ・チャンピオンのアルハアリ(エジプト)に1−0で辛勝、決勝進出を決めました。

 さてきょうは、広島対ウルサンの試合だけについて話し合いたいと思います。

広島対ウルサンの試合は、ロンドン五輪での日韓による3位決定戦で、日本は宿敵韓国に敗れ、銅メダルを逸するという生々しい記憶を残した後の最初の日韓戦ですので、「日本代表の広島が韓国代表のウルサンとどういう戦いをするだろうか?」と大変興味深く期待しながら(TVにて)観戦しました。

 広島のスタメンは、GK西川、DFファン・ソッコ、塩谷、水本、MF(ボランチ)青山、森崎和(石原)、MF(アタッカー)石川(千葉)、高萩、森崎浩、山岸(清水)、FW佐藤。カッコ内は交代選手。

 広島はアルハアリ戦のメンバーとは異なり、顔面を負傷したGKの西川が復帰、同じく負傷した右DF森脇に代えファン・ソッコ、致命的なミスをしたセンターバックの千葉に代え塩谷、MF右サイドアタッカーのミキッチに代え石川、左サイドの清水に代えて山岸というように、大幅にメンバーチェンジをしていました。

 試合開始早々、ウルサンはダイナミックな動きで広島陣内に攻め込み、広島のDF陣を脅かしましたが、広島も徐々に盛り返して均衡を保ちかけていました。

 しかし、前半17分広島は思わぬDFのミスにて失点。DF水本がゴール前にて斜め前から来たボールを後ろに振り向いてトラップしてゴールへ向かってバックパス。GK不在の無人ゴールにボールは吸い込まれ、相手のウルサンに先制点を献上。

 この試合も広島は反撃し同点ゴール。前半35分、相手ゴール斜め右約25メートルの位置からMF森崎浩が左足でキック、ボールは弧を描いて相手ゴール左ポストの手前へ、FW佐藤がヘッドで合わせてシュート、相手GKが足で止めたこぼれ球をMF山岸がすかさず飛び込み足でプッシュし1−1の同点。

 その後の広島は同点で少し気が緩んだのか、第一戦試合で私が指摘したMFのアタッカーの動きが緩慢になり、ウルサンに押し込まれる場面が再三あったが得点までに結びつかず、前半1−1で終了。

 後半戦は立ち上がりウルサンがボールを支配していましたが、11分広島はMF森崎和、青山、高萩、森崎浩が中盤から前後に緩急を入れた絶妙なパスを繋ぎ、左サイドのMF山岸にパス、山岸は間髪入れずゴールのファーポストに向かってクロス、相手GKがキャッチしようと構えていたところにFW佐藤が前を横切るように飛び込み足に少しカスッて直接ネットに刺さる見事なゴールを決めて2−1。 

 その後のウルサンは15分にMFラフィーニョのシュートをGK西川が足で防いでから、ガタッと動きが止まり広島ペースでゲームは展開。

27分佐藤と高萩が相手ゴール前でパスを交わし佐藤がシュートを決めて3−1と引き離し、その後も追加点ができると思われましたが、攻めずに時間稼ぎかのようなバックパスの繰り返し、アディショナルタイムにてDF塩谷が不用意な切り替えしで相手にボールを奪われ、その瞬間に反則をおかし相手にFKが与えられ、それでゴールを決められたところで主審のタイムアップの笛がなり、広島が3−2で韓国のウルサンに勝利、5位を確保しました。

 広島の3試合を振り返って私が感じたコトは、キャプテンでエースでもある佐藤寿人を中心によく纏まった組織力のあるチームだ、という印象を強く受けました。また、このチームだったら準決勝に進んでもおかしくない、と思えるほど、ピッチ上で、その実力を示していました。しかしその半面残念なコトに、3試合の4失点すべてが、味方の不用意なエラーから生まれていたのは実に惜しまれます。

 そのエラーの原因は、広島の長所でもあるリラックスしたプレーが、ときおり、気の抜けたプレー(意識の虚)となって現れていたのです。そのために、試合中は集中力を欠かさないコトが大切だ、と感じました。

特に、MFのトップ下の高萩と森崎浩、それにボランチの青山と森崎和の、時折現れる緩慢なプレーが、最終ラインのDFの3人にもその癖が乗り移って、その結果、致命的なエラーとなって現れたようにも感じられました。

一人一人のボール扱いは実に丁寧で素晴らしいのですが、逆にそれらがスピードというかプレーのテンポを遅らせている原因にもなっているようです。

 攻撃に関しては佐藤のゴール前の動きの素晴らしさが目立ちました。しかし、両サイドからのクロスの不正確さが目立ち得点まで結びつきませんでした。それにMFの横への動きと縦への飛び出しの動きがなかったのには不満を感じました。

MFはボールがあるときの動きはよいのですが、ボールなしのときに止まっていたり歩いていたりで、相手がカウンター攻撃を仕掛けてきた場合に、帰陣が遅れて、致命的な結果にもなる恐れがあるコトを考慮してプレーするコトが望まれます。

 これら一連の課題を克服すれば、広島は来季のJリーグ連覇もACLのチャンピオンも期待できそうです。それだけの器がある素晴らしいチームでした。

 この広島サンフレッッチェで忘れてならないのは森安一監督の功績です。彼は、現役選手時代、当時のオフト日本代表監督の指揮のもと、無名のボランチとして、南米の強豪アルゼンチンを相手に堂々とデビューしていたのです。その試合後、当時世界的にも有名だった、MFのカニージャ選手に、ある記者が、「日本の選手で誰が印象に残ったですか?」と質問したとき、彼は、「16番(森安)が一番いやだった、コースに入ろうとするとその選手がいるのにはまいった」と応えたそうです。

その当時は、まだ「ボランチ」というポルトガル語の「舵取り」という言葉の意味もその機能も一般的には知られていなかったのですが、「森安」の名がクローズアップされてから、あっという間に、その言葉が広められたのです。

 監督就任1年目の彼は、広島をJリーグ初優勝させ、今回のクラブW杯で世界の強豪相手に堂々と戦いました。彼の手腕は、現役時代に養われた彼の先々を読む能力と経験が監督の仕事にも活かされているように感じました。

 それとJリーグのMVPをはじめ賞を独り占めした佐藤寿人こそ、広島の大看板、全試合出場、警告なし、得点王と、素晴らしい模範を示してくれた素晴らしい選手です。この大会でも、味方だけでなく相手の選手からも好かれている様子が、画面を通して見ることができました。ぜひ、これからも日本サッカー界を牽引して欲しい選手の一人です。

 昨夜のコリンチャンス対アルハアリの試合のコトについては次回に取り上げたいと考えています。よろしくお願いします。

 グラシアス! アスタ・ラ・プロクシマ

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