Japan Soccer 50年

2012年12月25日火曜日

クラブFIFA・W杯サッカー観戦記 (5)


「コリン星、チェルシースターを退け、横浜の空を栄冠で輝かさせた!」

 サッカー界の星の王座は5年の間欧州のスター勢力に占拠されていた。その座を奪回すべく、南米のスターは、ブラジルの雄コリン星軍団を決戦の地日本に送った。 
 

2012年12月16日の夜、王座の決戦は予想通り、欧州の強豪イングランドのチェルシースター軍団とコリン星軍団の対戦となった。

コリン星は、この王座奪回のチャンスに、ペルーの請負戦士ゲレーロを雇って、チェルシースター軍団の鉄壁の壁(ゴール)を掠奪、猛反撃されても、守護神である聖カッシオに支えられ、世界の星の王座奪回に成功した。

その夜の横浜の空はコリン星の歓喜に包まれキラキラと輝いていた。

こんにちは! 蜻蛉です。 クラブW杯で、南米代表コリンチャンス(ブラジル)が欧州代表チェルシー(イングランド)を1−0で破り、世界の頂点に立ちました。最後のタイムアップ寸前まで、世界一決定戦に相応しい、スリルに富む素晴らしいサッカーの攻防で魅させてくれました。

最初に記載した「コリン星‐‐‐」は、チャンピオンになったコリンチャンスという名前をコリンとチャンスに分離させ、ペルー人のストライカーの名がゲレーロ(Gurrero)=戦士という意味と彼のあだ名がデプレダドール(depredador)=掠奪者と呼ばれているるコト、ゴールを死守したGKカッシオの奇跡を起こす聖人のようなプレーから名前の頭に聖(英語のa saint)を付け、サッカー界のスター(星)軍団を喩えて、駄洒落のような遊びの文章を組み立てた、というわけです。

きょうはこの試合について話し合いたいと思います。私は正直なところ、日本のサッカー関係者やサッカーファンが、スペイン代表やFCバルセロナに代表される、欧州のサッカーを崇拝し、ブラジルとアルゼンチンのサッカーを少し見下ろすような傾向があるのでは、とペルーから日本に一時帰国して以来、日本サッカー界を垣間見てきてそう感じております。

ですからこの試合、南米サッカーを代表するブラジルのコリンチャンスが、欧州サッカーを代表するイングランドのチェルシーにどういう戦いをするか? 

それに、低迷しているペルーサッカー界から、久しぶりに世界の檜舞台にコリンチャンスの一員として登場するパウロ・ゲレーロが、日本のサッカーファンの前で、彼が持っているストライカーとしての実力を示してくれるだろうか?

また、この試合にかける両チーム監督の駆け引きと采配ぶりどうだろうか?等々。期待と心配と興味をまじえて観戦しました。

両チームの先発は、

(チェルシー):GKチェフ、DFイバノビッチ、ケーヒル、D・ルイス、A・コール、MF(ボランチ)ラミーレス、ランパード、(アタッカー)モーゼス、マタ、アザール、FWトーレス。 ベニッテス監督

(コリンチャンス):GKカッシオ、DFアレサンドロ、シカン、P・アンドレ、F・サントス、MF(ボランチ)パウリーニョ、ラウフィ、(アタッカー)エンリケ、ダニーロ、エメルソン、FWゲレーロ。 ティティ(チチ)監督

 チェルシーは準決勝の対メキシコ戦の先発と比べ大幅にメンバーチェンジ。DFのアスピリクエタを外してMFボランチのD・ルイスが入り、MFボランチはミケルを外しラミーレスとランパードを入れ、同アタッカーのオスカルを外しモーゼスを入れました。

 一方のコリンチャンスはMFアタッカーのドウグラスをホルへ・エンリケに代えただけでした。

 前半開始早々から、チェルシーはパワーとスピードでコリンチャス陣内を支配し、10分には(チ)ケーヒルのヘッドによるシュートを(コ)GKがゴールのライン上で坐った姿勢でボールをキャッチ。

その後、21分コリンチャンスもトップのゲレーロが相手の股間を抜いてゴールライン際から持ち込み相手のタックルで倒れてPKを訴えたが主審はその続行。

27分再びゲレーロはゴール前中央でエメルソに絶妙なスルーパス、GKと1対1でシュートするも力み過ぎてボールはバーを越え失敗。

33分ゲレーロはゴールエリア右サイドで、絶妙な胸のトラップでワンタッチコントロールして相手DFを サッと右に交わしてファーポストにパスを流したが味方の詰めが遅く得点にならず。

チェルシーも35分ゴール正面からモーゼスがシュートするもGKはパンチで逃れ、その後は一進一退で前半0−0で折り返しました。

 後半、チェルシーのスピード攻撃になれたコリンチャスは縦横にブラジルらしいリズムのテクニックと動きでチェルシーの守備網を分断し、得点のチャンスがありましたが、チェルシーのDF陣も最終ラインがしっかりと守り得点を許さず。     

69分(後半24分)コリンチャンスはゴール前の攻防からクリアーされたボールを(コ)MFパウリーニョがゴール正面の右サイドで拾い、ペナルティエリアのラインと平行にドリブルしながら左サイドに位置していたMFダニーロへパス、ダニーロがゴールに向けてクロスしたボールが相手DFの足に当たり、それがファーポストの近くに位置していたFWゲレーロの前に逸れ、ゲレーロはそのボールをジャンプヘッドしてゴール左隅にシュート、その時、ゴールライン上に位置していた、(チ)DFコールとルイスがジャンプするも届かず、ボールはネットに吸い込まれてゴール。コリンチャンスが0−0の均衡を破る先制点を、私が期待していたゲレーロが決めました。3万人?
のファンが絶叫し、試合を盛り上げてくれました。

 チェルシーもその得点でショックを受けながらも、ゴール前にロビングボールを入れてコリンチャンスのDF陣を脅かしましたが、(コ)GKカッシオの神業のようなプレーと、DF陣のカラダを張った防御網を破れませんでした。

アディショナルタイムに入り、左サイドからのロビングをF・トーレスがジャンプヘッド、ボールはゴール右ポスト内側のネットを揺るがし同点ゴールと思われました。しかし、線審の旗がオフサイドを示し万事休す。主審のタイムアップの笛が鳴り、コリンチャンスがこの大会2度目のタイトルを獲得しました。

 この試合の明暗は、前の試合でアルアハリ(エジプト)に苦戦したコリンチャンスがMFの選手1人を交代させただけチームの母体を維持したのに対して、前の試合のモンテレイ(メキシコ)で楽勝したチェルシーは、攻撃面で機能していた左サイドの駆け引きの巧いMFアタッカーのオスカル(ブラジル)と大活躍したアザール、ボランチで攻守に光っていたD・ルイス(ブラジル)、DF左サイドバックで積極的に攻撃参加していたA・コールのうち、オスカルを外し、D・ルイスを本来のセンターバックに下げ、母体を崩してしまったコトにあるのです。

 結果的にはコリンチャンスは相手の左サイドのアザールを中心とした攻撃を警戒して、右サイドに攻守において柔軟な対応ができるホルへ・エンリケを入れ、(おそらく監督からの指示で)相手のカウンターに備えて、後ろからの飛び出しを抑える使命を与えられていたように見えました。

エンリケは技術的にもコントロールが優れ、相手に自由にプレーさせない地味ないい選手と感じました。そのためアザールは前の試合のような味方の援護がなく、孤立状態でドリブルで強引に抜こうとしていました。ブラジルのDFはネイマルのような選手と対戦して、マンマークは慣れていて容易にDF網を破れませんでした。

マタ、オスカルのポジションにマタとブラジル人の(ボランチ)ラミーレスが入ったりしていましたが、ほとんどコリンチャンスの堅いDF陣に跳ね返され、逆に、カウンター攻撃をくらうなど、前の試合のようなわけにはいかなかったようです。

私が予想したとおり、2試合続けてよいコンディションで戦うのは難しい、と述べましたが、この試合はコリンチャンスが上昇し、逆に、チェルシーが下降して、それが結果として現れたのでは、と私は感じました。

チェルシーのベニッテス監督は、

なぜコンディションがよくなかったランパードを先発させたのか?イングランドとクラブのアイドルだからと気を使ったのだろうか? 

それに、ブラジルのチーム相手で3人のブラジル代表の選手を同時に使うのを、なぜ躊躇したのか? 

私が最も疑問視したのは、なぜ前の試合で攻撃と守備の起点になって大活躍していたダビッド・ルイスをセンターバックに下げたのか?

いくら技術が高い選手でも、周囲の選手が変われば、そう簡単にコンビネーションプレーを即興的に適合させるのは、たとえ、事前の打ち合わせがあったとしても不確定要素のあるリスクをもたらすのでは、と私はそう感じました。 

まして、相手は百戦錬磨の南米チャンピオン、ブラジルのコリンチャンスです。コリンチャンスの選手が、プレー中にパウサを入れ、上手にリズムを変えて、プレーにメリハリがあったのですが、それに気がつきましたか? 

このブログで、前に何度も「パウサ(pausa)」という言葉を使ってきました。この言葉はスペイン語で、文章の句読点にも使われて、止まる、休むという意味です。たとえば、サッカーでは、早いドリブルから急にピタッと止まり、少し間をおいてパスしたり、方向転換したり、シュートしたり、再びドリブルするなど、チョッと間を置くだけで、相手の動きを止めて、その僅かな瞬間に、局面を変えるプレーができるのです。

文章もセンテンスが長すぎると読みにくいし、意味が分かりにくいように、間に句読点を入れれば、文章もメリハリがあって読みやすくなるように、パウサを入れてプレーすると、余裕が保たれ視野も広くなります。それでチェルシーの選手がマークに入っても、簡単にタックルできない状態にされていたのです。

日本の選手にも上手にパウサを入れている選手もいますが、南米の選手のように小さい子どものころからストリートサッカーやミニゲームでカラダをぶつけ合いながら自然と身のこなしをカラダの内部感覚で本能的にプレーできるのと違い、まだ不自然なところがあります。しかし、練習で意識してそのような状況を設定して何度も練習すれば自然と無意識にパウサを使ってプレーができるようになるでしょう。

次回は3位決定戦の試合とこの大会を観戦してきた総評を述べてみたいと考えています。

最後に、エジプトのクラブの名前「アルアハリ」を誤って「アルハアリ」と当初から記載してしまいましたので、ここでお詫び申し上げます。

グラシアス! アスタ・ラ・プロクシマ

0 件のコメント:

コメントを投稿