Japan Soccer 50年

2012年8月20日月曜日

ロンドン五輪サッカー観戦記 (8)

こんにちは! 蜻蛉です。ロンドン五輪も閉幕しましたので、この観戦記も今回を最後に閉じることにします。ご拝読ありがとうございました。
 さて、きょうは男子の銅メダルをかけた日本対韓国戦と金メダルをかけたメキシコ対ブラジル戦の試合について話し合いたいと思います。

 日本対韓国の試合は深夜3時ごろからTVの実況放送だったのですが、連日の疲れと最終戦という気のゆるみで、午前1時半に電気を消して2時間ほど布団で横になって一休みしたのが失敗、目を覚まし時計を見たら5時前、しまったと思いTVのリモコンのスイッチ入れたら、既に後半戦10分経過、日本は0−1で韓国に1点リードされていました(午前中に再放送があるとは知らず試合後寝て、10時ごろ目を覚ましTVをオンにしたら、この試合やっていたのですが、なんと偶然にも、前と同じ後半10分経過していました)。

 このような失態で観戦記も中途半端ですが、私が実際に観た範囲のコトについて話したいと思います。

 観戦記(6)で、この試合の勝負は意識の差で決まるだろう、と私は予想していました。サッカーに限らず、他の競技においても、日韓戦となると、日本の選手以上に韓国の選手の意識が強いように感じます。

今回の五輪でも、女子のバレーボールで日本は勝ちましたが、その他の競技ではどうですか? 女子のプロゴルフの大会はどうですか?

南米のペルーとチリの隣国同士の関係に見られる、政治的な姿勢の強弱が、サッカーの試合の結果にも現れるように、同じような現象が日韓の間に横たわっているような感じがします。 

その背景に戦争と領土、という政治問題が微妙に潜在的な意識となり、対抗戦となると、その意識が顕在化されて、プレーの動機付けにもなっているのではないでしょうか。(ここでは韓国が有利)

今回の試合の韓国は、監督をはじめ7人の選手がJリーグの経験者であり、日本サッカーを熟知していました。一方の日本は、個人的には選手を知っていても、韓国のチームがどういうサッカーをするのかは、漠然とはイメージがあっても、韓国サイドほど、情報は得ていなかった、と思われます。(ここでも韓国が有利)

日本のパス攻撃によるボールの支配のゲーム運びとDF吉田主将を中心とした堅固なディフェンス陣も、準決勝の対メキシコ戦の前半にFW大津の得点がピークで、メキシコのコーナーキック(その前に吉田はオフサイドだ、とジェスチャーで線審に抗議していた)でゴールを決められてから、それまでポシティブだったプレーが徐々にネガティブなプレーになり、それが自然とチーム間の連携に狂いが生じ、しかも連日の試合や練習と移動の疲れのストレスが、GK権田とMF扇原のミスプレーとなって現れ、その上、相手のカウンター攻撃で、相手のFW1人に3人のDFが振り切られて3点目を許してしまう結果になってしまいました。

日本の選手にしてみれば、それまで無失点でしかも先取点で、勝てると思っていたところ、まさかと思っていたCKからの失点と味方のエラーで逆転を許し、気落ちしたところに、単身ドリブルで突破されて、駄目押しのゴールを与えてしまった日本のディフェンダーのショックは計り知れません。五輪前の試合で勝っていましたから、なおさら精神的なダメージが強かったのでは、と思われます。それも相乗的な疲労となって韓国戦で現れていたようです。一方の韓国は相手がブラジル、負けてもともと、勝てば儲けモノの心境でできる相手に負けたので、日本ほどダメージは受けていなかたのでは、と思われます。(これも韓国が有利)

韓国は日本が韓国陣内でボールを支配してくるコトを想定して、あらかじめディフェンスラインを下げ、日本の両サイドバックの攻撃を許し、逆に日本の手薄になったDF陣内に、強力なFWを活かして、カウンター攻撃で勝負を決める作戦だったようで、それがズバリ的中。OA(オーバーエイジ)のFW朴主永(アーセナル所属)の個人技による2得点で試合を決定づけてしまったようです(これに似ているのがイタリアサッカーの伝統的カテナチオ=相手の攻撃を許せる強力なDFで守り抜き、電撃的なカウンターのパスを前線のFWに送り、その強力FWがゴールを決めるやり方として知られている)。

残念ながら銅メダル獲得はなりませんでしたが、この敗戦は、選手たちにとって、素晴らしい経験になったはずです。ライバル韓国に対しても、これまで以上に強いライバル意識を植え付けたのでは、と思います。

日本は欧米のサッカーを意識する以上に、韓国、北朝鮮、中国(間違いなく強力なライバルになる)という同じ東アジアの諸国を警戒しなければ、肝腎な試合で足元をすくわれます。そのためにも、若年層からその意識をもたせるようにするコトが大切だと思います。もちろん敵意識ではありません。良きライバルとして、切磋琢磨して、互いにアジアのレベルを高めて欲しいという意味です。

金メダル獲得を争ったメキシコ対ブラジル戦は、意外なコトに、試合開始直後の30秒で、メキシコが先制点。メキシコの対日本戦の2点目を思わせる得点でした。 

ブラジルは開始早々、ゆったりしたリズムでパスを回し始めましたが、右サイドバックの短い横パスがメキシコの選手にカットされ、直ぐFWのペラルタにパス。ペラルタはそのままドリブルでペナルティエリアに持ち込んでシュート。ボールはゴールに向かって左ポストの内側に吸い込まれ、先制点となりました。

ブラジルは期待のネイマルで同点を狙いましたが、メキシコのDF陣は堅く、決定的な得点のチャンスはなく、ズルズルとメキシコのペースにはまり前半終了。

後半もメキシコの早いつぶしにあって、リズムに乗れず、やたらに力ずくで攻めるが容易に、相手の防御網を崩せず、逆に、焦りが、虚になって、メキシコの右サイドからのFK(フリーキック)で、FWペラルタがノーマークでヘディングシュートを決め、ブラジルの追従を突き放しました。最後に1点決めましたが、タイムアップの笛が鳴り、メキシコが金メダルを獲得。ブラジルは今回の五輪も、金メダルを獲得できず、サッカー王国ブラジルも五輪の魔物には勝てなかったようです。

敗戦した日本もブラジルも、なんとなく戦略的なリアリズムが欠けていたように、私はそう感じました。その点、韓国もメキシコも、どうやって守り、どうやって得点するか、「己の力を知って、相手の力を知る」選手たちのプレー、動き、駆け引きが伝わってくる感じがしました。

日本はメダルは取れませんでしたが、今回の五輪で、近い将来フル代表の一角を占めるだろうと思われる選手がいるコトが確認できただけでも、大きな収穫のあったロンドン五輪だった、と私はそのように思いました。

観戦記(6)で日本と韓国が銀メダルをかけた争いと記載しましたが、銀でなく、銅に訂正させていただきます。プレート同じで、疲れてくると無意識に誤ってしまうようです。

日韓戦が終わったと思いましたら、突然「竹島(韓国名独島=トクト)」が世界的な話題になってしまいました。スポーツ界でも芸能界でも竹島という名の人が活躍した例はありません。だいぶ前、小泉首相の時代、島根県議会が「竹島の日」を制定しようとして、韓国側に不快な刺激を与えました。それに対して、小泉首相は「自治団体が考えていることですから」、と介入を避けた応答がありました。

今回の問題も、五輪の男子サッカーと女子バレーボールが銅メダルをかけた試合の前に、予告なしに韓国の大統領が独島(竹島)を訪れたコトから事件が発生したのですが、韓国サッカー協会の応対も不自然。

領有を主張するメッセージが書かれたプラカードは、一韓国人の観客が持ち込んだモノですが、「独島は我々の領土」と書かれたメッセージは、観客から受け取ってグラウンド内での行為は、たとえ選手自身が政治的な意図がなくとも、書かれた意味が分かっての上で大観衆の前で、しかもTVのカメラの前で、そのプラカードを裸(試合中だったらイエローカード)で掲げたコト事態、五輪憲章の違反行為として、何らかの制裁を受けるのは当然。もちろんメダルは授与されなくて当然。

韓国サッカー協会は日本サッカー協会に対し、謝罪でなく釈明の文書で、「選手は、観客から、たまたま渡されたものだった。そして、偶発的な行動だった」という内容だったとされています。

また、IOC(国際オリンピック委員会)からFIFAに対して、見解を求めているため、同協会は先手を打つため、FIFAに人を派遣して釈明して、選手への制裁を回避するよう働きかけているそうです。

どんな理由があるにせよ、FIFAの傘下にある国の選手たちも、五輪憲章のもとで、ルールを守り競技しているのですから、ルール違反があれば、別にIOCでなくともFIFAは韓国サッカー協会とその選手に対し、しかるべき厳重なる制裁があって当然、もし例外を認めれば、今後の統制が難しくなる、と思われます。

韓国サッカー協会の行動の裏に国会からのプレッシャーがあるようですが、もしそのコトが事実なら、協会自体にも制裁が波及する恐れがあります。私が住んでいるペルーサッカー協会も、政府関係の団体が介入し、FIFAから制裁を受けていた、という例があるのです。

不愉快な竹島問題で、ロンドン五輪サッカーの観戦記を閉じますのは、不本意ですが、きょう(8月19日)から、日本で開催されるFIFA・W杯女子サッカーU−20での、「ヤングなでしこ」の活躍を期待しまして観戦記を閉じたいと思います。

最後に、皆さんの感想やら意見も拝聴したいと思っています。ぜひ、下記メールアドレス宛にご一報ください。

 グラシアス! アスタ・ラ・プロクシマ

お知らせ:蜻蛉こと竹嶋住夫(たけしま・すみお)のメール・アドレスは、

     sumiotakeshima@yahoo.co.jp

2012年8月19日日曜日

ロンドン五輪サッカー観戦記 (7)


こんにちは! 蜻蛉です。 深夜の五輪漬も完食しました。そこで、この観戦記を直ぐに記載しようと思ったのですが、満腹状態でしかも時差ボケのため、思うように頭が働かず、ノビノビになってしまいました。
 ロンドン五輪も幕を閉じました。日本選手団も国民の期待に応えて大活躍。特に、サッカー界は男女揃ってベスト4以内、なでしこジャパンが銀メダルを獲得、という偉業を成し遂げてくれました。 「おめでとう!!」

 さて、きょうは金メダルをかけた、女子サッカーの日本対アメリカの試合に関して話し合いたいと思います。

 試合の結果は2−1で日本は負けましたが、どちらが勝っても金メダルに相応しい内容の試合で、世界のサッカーファンを魅了させました。

 ロンドンのウエンブレースタジアムと言えば、サッカーの宮殿とか聖地と呼ばれ、イギリスの選手でも、国内のカップ戦の決勝に出るか国の代表選手として国際試合に出場しなければプレーできない憧れのスタジアムなのに、なでしこの選手は準決勝の対フランス戦と決勝の対アメリカ戦の2試合もプレーできた幸せ者。しかも、それぞれの試合に、女子サッカー史上はじめての6万人以上と8万人以上の観衆の前でプレーしたんですよ。私たちの時代の選手たちでしたら、おそらく、大舞台で大観衆の前で、上気して、冷静にプレーができなかっただろうか、と思われます。

 対戦相手もW杯の決勝戦と同じアメリカという、現在世界女子サッカー界の最高峰同士。スター選手もなでしこの沢穂希にアメリカのワンバック。

 これだけ女子サッカー最高の条件が揃い、しかも金メダルを争う決勝戦で、体格的にも、過去の実績でも、ハンデを背負うなでしこジャパンが、どういう戦いをするか、大いなる興味をもって観戦しました。

 〈前半8分〉(米)左サイドのMFヒースからペナルティエリア左サイドに位置しているFWモーガンに縦パス、モーガンは日本のDF2人を背にしてボールを受け、ゴールライン際で、左足で日本ゴール前にドリブン(ライナー性)のクロスを入れ、ゴール前でシュート体勢で待ち構えていたFWワンバックの手前で、2列目から突然走り込んできたMFロイドがヘディングシュートを決めて、先制ゴール。

 〈後半9分〉(米)中央からMFロイドがドリブルで日本陣内にもちこみ、右サイドに方向を変えた瞬間、約25メートルの位置から右足で意表をついたミドルシュートを、日本のGK福元の右をついて、2点目のゴールを決めた。

 〈後半16 分〉(日)中盤右がらMF宮間が、ペナルティエリア右に走り込んだFW大野へ縦パス。大野はパスを受けて、ゴールライン際までもち込み、ゴール前に飛び込んできたMF沢へプルバック(斜め後ろ)、沢はダイレクトでシュート、相手のGKとDF2人は倒れながら防戦、ボールはDFの体に当たり、再び沢の足元へ戻り、沢はシュートすると見せかけて、ゴール左サイドに詰めていたFW大儀見へパス、大儀見は冷静に無人のゴールへプッシュして、1点差に詰め寄った。

 DF鮫島に代わって入ったFW岩淵が相手DFのボールを奪い、GKと1対1の態勢でシュートしたが手ではじかれ得点にはならず、万事休す。残念ながら、目標だった金メダル獲得を達成できませんでしたが、銀メダルを獲得しました。

 アメリカのゴールを日本のDFのミスと見る人もいるでしょうが、私はアメリカのロイド選手の好プレーを褒めるべきであると思っています。1点目のゴールは、彼女の前にワンバックがいたので、(日本の選手だったら)後方でクロスを受けるところでしたが、モーガン選手の体勢を見て、ワンバックの手前に飛び込んでヘッドで決めたファインプレーでした。2点目は現代サッカー(パス攻撃に対応する組織的な守備)の盲点を突いたドリブルで、少し早目のタイミングのミドルシュートだったため、日本のGKもDFも対応できないまま、シュートを打たれてしまったのです。

 ロイド選手の2つのプレーは、状況判断の良さとシュートに必要な意外性と即興性があったからこそ、日本の堅いDF陣も防ぎようがなかったと言える、素晴らしいプレーであったと思いました。

 日本の得点もなでしこジャパンらしい五輪の集大成のゴールと言っても過言ではないと思います。この得点にはなでしこの選手たちの恐るべき執念が込められていた、と感じるほど、アメリカのDF陣を叩きのめした(GKと2人のDFが必死に体を張って倒れながら防戦した後、(並みの選手でしたら再びシュートしたであろう)沢はシュートせず、横で待ち構えていたフリーの大儀見にパスして、彼女にゴールを決めさせた。このプレーにこそ、沢選手の偉大さが現れていたようです。

 宮間から大野へ、大野から沢へ、沢から大儀見へと渡ったパスに、なでしこジャパンのコミュニケーションの素晴らしさとチームの一体感を感じました。

 最後の同点のチャンスと思われた岩淵選手のプレーも、小さな体で、大きなDFの奪い取る迫力のある動きは、シュートの失敗を含めて、ヤングなでしこの明日の可能性を感じました。「失敗は成功のもと」、あのシュートは本人が一番悔しいと思っているはず、間違いなく岩淵選手の教訓として生きると思われます。

 ああいう状況でゴールが決められないのが、日本選手共通の課題であると、私はそう感じております。技術的には、ドリブルする前に、相手ゴールとGKの他に状況を見て、どこに蹴るかイメージして、キックの際にはボールに集中して蹴るようにすれば、得点の確立が高くなるようです。あの時の岩淵選手は相手のGKを見て蹴っていましたので、ボールはGKが取りやすい高さになってしまったようです。

 今回の五輪でなでしこジャパンで感じたコトは、もう少しパスの精度を高めるコトとパスを受ける際のチョッとした動きと体勢を工夫するコトで、もっと楽に試合の展開を運べたのではないかと感じました。それに体格的には、できれば平均身長165cmぐらいになってほしいですね。と言いますのは、このサイズに匹敵するFWの大儀見選手、MFの阪口選手、DFの熊谷選手たちの五輪での活躍と日本選手に足りない強さを感じたからです。

 欧米の選手たちは技術もしっかりして、日本のような組織力をつけてきたら、今のままでは対応できなくなると思います。代表選手の資質として、テクニックにスピードと欧米の選手に対抗できる体力的な強さのある選手が望まれます。

そのためにも、選手の発掘と育成と強化に加え、下部組織と、Lリーグのレベルを高め、指導者のレベルを尚一層高めていくコトにつきます。そのためにも資金的な支援とインフラをより充実させていくコトが不可欠であろうかと思います。

8月19日から、U−20のFIFA・W杯が日本で開催されます。ヤングなでしこがどれだけ活躍できるか、フル代表に加入できる選手が現れるだろうか、楽しみですね。私たちも、しっかり応援しましょう。

「がんばれ! ヤングなでしこ」

グラシアス! アスタ・ラ・プロクシマ

2012年8月13日月曜日

ロンドン五輪サッカー観戦記 (6)




こんにちは! 蜻蛉です。 いよいよ日本サッカー界の五輪史上初めての決勝戦出場で、「なでしこジャパン」がアメリカ代表に勝って、初めての金メダルを獲得するかどうか、節電中の真夜中の午前3時から始まる、この試合のTV実況放送には、サッカーファンだけでなく、日本国民の皆さん方も徹夜で観戦されるコトでしょう。ぜひ勝って金メダル獲得と日章旗を一番高いところに掲げてもらいたいですね。
 さて、観戦記(5)でなでしこジャパンの準決勝についての観戦記と決勝戦の対米国との試合ついての展望を記載しましたが、ここでは、残念ながら準決勝戦で、メキシコに1−3で負け、隣国韓国代表との銅メダルをかけた3位決定戦に挑む、男子日本代表の対メキシコ戦のコトと対韓国戦について話し合いたいと思います。

 日本は前半12分、ペナルティエリアの外、左サイドのMF東からの短い横パスを受けたMF大津は中央から右足でワントラップして、その足でゴールに向けて思いっきりシュート、ボールは強烈な勢いで、ゴールの右隅のネットに刺さる素晴らしい豪快なゴールを決めました。

 この時点から、日本は多少楽観的なムードがただよい、選手たちは連日の積み重なる疲れが出始めだしたのに気づかず、それに、メキシコが少し少しプレッシャーをかけているのに、気がつかないで、同じ調子でプレーしていたため、パスミスやら競り負けたりして、相手のペースにはまってしまいました。

このような疲れは、時計の電池が消耗すると、時計の針の動きが少しずつ遅れるように、パスを出す(受ける)タイミングが意志とは無関係にズレてしまいます。また、疲れから血管に乳酸値が高まりますと、筋肉は柔軟性がなくなり、パフォーマンスが落ち、気持ちと体が同化作用から自然に異化作用が働きだして、プレーに最も必要なクリエイティブな頭の働きが鈍くなってきますから、視野が狭くなり、判断力も落ちて、プレーにも精彩が欠けミスをおかすコトになります。

前半31 分、メキシコは右からのCKが日本選手の頭をカスめて、ゴール正面に飛び込んだ相手のFWにヘッドで決められ同点。

後半20分、日本側に、意外な凡ミスがあって、メキシコに逆転弾を献上してしまいました。メキシコは速いパスで左サイドから攻め、ゴールラインぎりぎりの深い縦パスを、相手の選手は走り込んで、ボールをプルバック、それを受けた選手が直接ゴールに向けて左足でシュート。GK権田は両手でキャッチ。ここまでは問題はなかったのですが、権田は、相手の選手がまだ引いていないのに、近くのMF扇原に手のアンダースローイングでパス、後ろに相手がマークしていたため、無造作に後方に切り返したところ、パスして戻ってきた相手選手にボールを奪われ、右足でボールを押し出し、強烈なミドルシュートをゴール左隅に決められ、1−2の逆転を許してしまいました。
これまでの試合では考えられないGK権田の判断ミスが、MFボランチ扇原のポカミスを呼び、アッという間にゴールされていた、というわけです。それまでの4試合で完封してきた権田にある種の後遺症状態で、無意識に状況を確認せず、習慣的に投げてしまったのでは、と思います。また扇原のプレーはメキシコの選手たちは熟知していて、それにはまってしまったのでは、と言えそうです。駄目押しの3点目は、相手FW1人に3人のDFが阻止できず、ゴール前までドリブルで持ち込まれて、シュートを決められたモノで、ある種の集中力が切れて体が反応しなくなった状態だった、と言えそうです。

この日のスタメンはGK権田、DF酒井宏樹、鈴木、吉田、徳永、MF山口、扇原(斉藤)、清武(宇佐美)、東(杉本)、大津、FW永井。カッコは交代選手。

個別に選手で感じたコトを述べますと、

GK権田は2点目のミスは本人も気づいているコトでしょう。サードオブザピッチのディフェンディングサード(ピッチを3等分した守備側のゾーン)はチョッとしたミスで、相手にゴールを許す、危険な地域です。GKのミスはチームにダメージを与えますから、GKは絶対にミスしてはならない使命があるのです。

DFの酒井はケガから復帰してから精彩を欠き、それが審判に抗議したり相手選手と口論する態度に出ています。冷静さを欠いているわけです。特にマークの仕方はチームで一番落ちる。ドイツのクラブであのような守備をしていたら、レギュラーの座は保証されません。鈴木はこれまで良かったのですが、酒井のマークが緩めば、それだけ彼自身に負担がかかってくるのです。一つの虚がチームの崩壊につながるのです。吉田もチームの機能が狂っていては、どうにもならない状態であったようです。徳永もこの試合のできは一番悪かったようです。

MF山口は普通のできでしたが、相棒の扇原のプレーがスピードを欠き、うまく連動できなかったようです。扇原はあの痛恨のミスでチームは負けたコトを反省し、逆に、二度と繰り返さないよう、今後の教訓として生かしてもらいたいです。清武も東も、これまでのプレーと比べれば、この試合が一番悪かった。大津はゴールを決め、動きがシャープで自信をもってプレーしていました。

永井はケガで出場できないと思われていましたが、トップに置いたのが失敗だったように思われます。彼のよなスピードのあるプレーヤーは、少し後方に位置して、影からサッと飛び出すようにすれば、もっと相手の守備を脅かせたのでは、と私は感じましたが、皆さんはどう思われますか?

メキシコのサッカーは地道にレベルを上げてきています。またメキシコはコパ・アメリカ(南米選手権)、コパ・リベルタドーレス(南米クラブ選手権)、コパ・スーダアメリカ(南米クラブ選手権)に、北米・中南米唯一の国として参加して、南米諸国の強豪と試合をし、力をつけてきていますから、決勝の対戦相手ブラジルとも互角の勝負をすると思います。

さて、宿敵韓国と銀メダルをかける日本ですが、どれだけ精神的、肉体的疲労が回復するかが問題です。韓国の日本に対するライバル意識が強いか、日本の韓国に対するライバル意識が強いかが、技術以上に、試合の展開と結果に現れてくるような気がします。韓国はメダルを取れば、徴兵から免れ、しかも、日本より高い報奨金が払われるそうですから、かなり強い刺激のあるモチベーションになると思われます。ですから、日本も相当がんばらないと勝つのはむずかしいようです。しかし、スペイン戦からエジプト戦までに見せたサッカーをすれば、必ず勝機があります。対メキシコ戦の敗戦ショックと疲労の回復が勝利のカギになると予想しております。ぜひ、このチャンスを活かし、韓国に勝って、メキシコ五輪以来の銅メダルを獲得してくれるよう、選手たちも最後の力を振絞ってくれるコトを期待しています。

この試合も11日の午前3時からTV放送されるそうです。寝不足で体を壊さないようお互いに気をつけましょう。

「がんばれ! 日本サッカー」

グラシアス! アスタ・ラ・プロクシマ

 蜻蛉こと竹嶋住夫のメールアドレスのお知らせ:
〈sumiotakeshima@yahoo.co.jp〉.

ロンドン五輪サッカー観戦記 (5)


こんにちは! 蜻蛉です。 五輪サッカーも始まったと思ったら、アッという間に終幕を目前にしております。
期待されていました“なでしこジャパン”は辛うじてフランスに勝ち(2−1)、カナダに延長戦のロスタイムで勝利(4−3)した米国と、金メダルをかけた試合(日本時間10日午前3時45分)を行います。

一方の男子は残念ながらメキシコに逆転負けで、強豪ブラジルに負けた(0−3)韓国と銅メダルをかけたアジア同士の試合(日本時間11日午前3時45分)を行います。

 さて、きょうは観戦記(5)と(6)に分けて、男女の準決勝の試合のコトと次の試合のコトについて話し合いたいと思います。(皆さんがご覧になられるのは、試合後になるかもしれません)

 「なでしこジャパン」は監督と選手たちの集大成的な目標である金メダル達成にあと一歩までこぎ着けました。スゴ〜いですね。

 なでしこの選手たちを覗いて見ますと、それこそ体を張って死守しているプレーには、強烈な執念と強運を感じさせます。

 この試合のシュート数で見ますと、フランス27本(後半の1点)に対し、日本はたったの4本(前半の2点)だけで、後半戦はフランスの猛攻で日本は防戦一方(1度、大儀見のシュートがポストに当たったけれど)、その上、相手にPKまで与えて失敗させるなど、1点だけで押さえられたのが不思議なくらいでした。

 なでしこの2得点はキャプテン宮間のフリーキック(FK)から生まれたモノです。

前半32分、相手ゴール約25メートル(右より)辺りから宮間がゴール前に右足でキック、相手GKがそのボールを手でキャッチしかけたが後ろにこぼし、落ちてきたボールをFW大儀見が倒れながら、相手のDFより一瞬速く、左足で軽くボールをプッシュして、先制点を決めました。2点目は、後半4分、同じような位置からのFKで宮間が右足でキック、ボールは弧を描きながらゴール前へ、MF阪口がピタリと頭で合わせてシュートを決めました。

 後半、なでしこの守備で一番心配していました左サイドバックの鮫島が相手に簡単に振り切られ、ゴールライン際からプルバック(斜め後ろの方向へのクロス)のパスをだされ、そこに飛び込んできた相手にダイレクトシュートを決められ、一点差に詰め寄られました。その焦りから?、2分後に、ペナルティエリア内で阪口が反則して、相手にPKを与えてしまいました。幸運にも相手キッカーのシュートは右ポストの外側に逸れ危機を免れました。しかし、その後も、再三再四ゴールを脅かされましたが、相手のミスで敗戦を免れ、勝つコトができました。

 この日のスタメンは、GK福元、DF近賀、岩清水、熊谷、鮫島、MF沢、阪口(田中)、宮間、川澄、FW大野(安藤)、大儀見。カッコは交代選手。

 GK福元はこの試合の救世主と言える大活躍で、味方に声で指示して動かせ、素晴らしい判断力で、自ら相手のシュートをセーブ。

 DFのサイドバック近賀と鮫島は、前進守備で相手にプレッシャーをかけるコトを忘れ、ズルズルと後退し、相手の侵入を容易にさせてしまったのが、苦戦の一つの要因です。また、クリアーが不正確で、しかも短く中途半端で、味方の攻撃に援護できなかった。この2人がしっかり機能しなければ、米国に勝つどころか、大差で負ける恐れがありそうです。GK福元とセンターバック岩清水と熊谷がいまのところしっかりと機能しているお陰で、失点を最小限で抑えている、と言えます。

 DF陣がボールをキープしたら、逆襲でないかぎり、急いで前線に縦パスを入れないでDFとGKでボールをキープし、前線の選手にゆとりをもたせるコトと体力回復の時間を与えるコトが大切です。

MF阪口も攻守に活躍していますが、相手にPKを与える致命的なプレーをしてしまいました。それは彼女だけではなく、全ての選手にも当てはまるコトです。十分注意しなければなりません。沢はよい判断で危険な相手をタックルで抑えていますが、ボールの奪い合いで当たり負けしているコトもあり、誰かがそれをカバーする必要があります。攻撃の際もパスだけでなく得点に絡むシュートを決めて欲しい。宮間はFKとCKで、チームに大きな貢献をもたらしていますが、まだ、パスの精度が足りないようです。マークの仕方にも強さが足りません。川澄が攻守で霞んで見えるのはどうしてでしょう。攻守に中途半端で、鮫島との連携がうまく機能していないようです。米国にその弱みを突かれたら危険です。ですから熊谷、阪口、沢がどう対応するかが課題です。

 沢と阪口も攻撃の場合はうまく機能しているのですが、相手が攻め込んできたとき、ズルズルと下がれば、DFのラインがペナルティエリア内になり、長身フランス選手同様というより、米国の強力な長身FWモーガンとワンバック等に、一瞬にヘッドで決められる恐れがあります。そのためにもラインを上げて守れるよう、MFとFWの守備も欠かせないのです。

 FWの大野と大儀見も守備にも汗をながし健闘しています。米国に対しては先制点が絶対に必要です。ゴール前では執念を込めてシュートを決めてもらいたいですね。

 私は、「フランスのサッカーは調子に乗せると怖いが、脆さがある」コトも指摘しました。しかし、米国はこの五輪で苦戦しながらも逆転勝ちで、ここまで進んで来ている実力のあるチームです。総合力から見て勝てる相手ではありません。

 勝つためには、攻撃面で、対フランス戦のように、わずかな得点チャンスでもゴールする執念が必要です。相手からボールを奪ったら、正確なパスで、しかもパウサをいれながら縦横に繋いで、よいリズムに乗せるコトです。なぜならばミスパスで相手にボールを奪われますと、守りで体力が浪費します。フランス戦はそれが原因で、体力が落ちて、パフォーマンスが失われ、防戦に追い込まれたのです。

 それに、なでしこのセットプレーも武器です。大いに活用するコトです。

 アルゼンチンの元監督ルイス・メノッティは、

「戦術とは構築的なモノだ。そして予期せぬコトが起きる。動きのある世界においては、いかなる構築物もあまり意味がない」

 「戦術を考えるのは監督とコーチの仕事。だがそれを実行する選手たちは機械ではなく人間だから、良くも悪くも予想外のコトもしてしまう。観る者は、その予想外の部分に酔い痺れ、嘆き、感動を覚えるのだ」

「完璧な戦術を考えておけば勝てる、というなら、それはテレビゲームであって、サッカーではない」

と述べています。

 なでしこジャパンの選手全員がどれだけ集中して、ベクトルを合わせて、一体になってタイムアップの笛がなるまで力を出しきって戦えるか、チーム内に少しでも虚ができると、そこから崩壊するコトになる。これは、日本にも米国にも当てはまるコトです。

 男子のコトについては、ロンドン五輪サッカー観戦記(6)にて、話し合いたいと思います。

 「がんばれ! なでしこジャパン」

 グラシアス! アスタ・ラ・プロクシマ

2012年8月8日水曜日

ロンドン五輪サッカー観戦記(4)


こんにちは! 蜻蛉です。 なでしこジャパンの強さと頑張りに驚き、感激しました。 フランスの猛攻によく耐え、2−1の勝利という結果を出すとは、凄〜い!
金メダルをかけて戦う対戦相手はアメリカに決まりましたが、カナダと延長戦の末、ロスタイムに決勝点を決め、4−3という激戦で辛うじて勝利。

なでしこの佐々木監督も選手たちも、金メダルを最初から目指していましたので、彼女らの望みがかなえられるよう祈りましょう。

 さて、きょうは男子のメキシコとメダルをかけた準決勝の試合があります。

隣国のライバル韓国も開催国の英国を相手に1−1の後のPK戦で5−4にて勝利、ホンジュラスに3−2で勝利した、金メダル候補筆頭のサッカー王国ブラジルと対戦します。同じアジアの韓国にも勝ってもらい、五輪史上はじめてのアジア同士の対決も夢ではありません。

 日本サッカーが世界のトップクラスと肩を並べるには、アジア諸国のレベルが高くなるコトが欠かせません。おそらく皆さんはブラジルとの対決を望んでおられるでしょうが。

 きょうの話題は、先日の男子準々決勝、日本対エジプトの試合について取り上げてみたいと思います。

結果は3−0で日本が勝ちましたが、点数の差に関係なく、エジプトもスピードとテクニックを駆使して、日本のゴールを脅かす激しいゲームを展開していました。

日本の勝因は、前半14分、MF清武が相手陣内中央の右サイドタッチライン際で、相手のボールを奪い、抜き出て直ぐ、右足でゴール前中央ぺナルティエリアラインに入った辺りに、アーリークロスのパスを入れ、相手GKとDFがボールに向かって移動していたところに快速ランナー永井が間一髪で競り勝ち、無人のゴールに右足でシュートを決め先行し、その後の展開にユトリを与えてくれたコトです。

絶好調の永井が負傷というアクシデンテで退場、という代償を払わされてしまいましたが、永井の代わり入った斉藤も俊足で、前半40分、相手陣内のペナルティエリアの外で相手を抜き去るところ、相手に後ろから倒され、その選手はレッドカードで退場というオマケが日本有利に導きました。

永井不在の日本はリズムが落ち、相手にボールを支配される時間が長かったのですが、後半戦は、数的有利を生かした日本は、軽快なリズムを取り戻し、パスを回して、相手の焦りによるファールを誘発し、後半33分に右サイドでFKがあり、清武が、相手に意表を突く、二アポストへドリブン(低い弾道の)クロス、DF吉田がそれに頭で合わせてシュートを決め2−0と相手を突き放し、後半38分にも左サイドからMF扇原が左足でゴール前に絶妙なクロスを入れ、FW大津が相手バック2人の間に割り込み、強烈なヘッドで3−0の駄目押し点を決め、日本は準決勝にコマを進めました。

この日のスタメンは、GK権田、DF酒井宏樹、鈴木、吉田、徳永、MF山口、扇原、清武(宇佐美)、東(酒井高徳)、永井(斉藤)FW(大津)。カッコは内交代選手。

GK権田はこの試合でも安定したプレーで活躍。チームの仲間や監督に信頼感を与えています。

DF酒井宏樹は負傷回復後で彼本来のプレーではなかった。鈴木は吉田の影で目立たないが、バックの要の一人として十分過ぎるほど活躍している。キャプテン吉田は、攻守にわたって活躍、待望のゴールを決め、リーダーとして、五輪の経験者として、トップチームの選手として、吉田イズムをチーム内に浸透させていると感ずるほど、選手の言動とプレーの中味の変化が顕著に現れています。徳永もオーバーエイジの貫禄を示すプレーで活躍。

MF(ボランチ)山口の運動量は素晴らしい。攻守にわたってチームにエネルギーを注入しています。扇原はなでしこの宮間のように、キックが正確、大津へのクロスも絶妙でした。

MF(アタッカー)清武は絶好調、モロッコ戦とこの日の永井へのパスは絶妙でした。またFKの吉田へのクロスもお見事。積極的にシュートも狙う姿勢は、彼のドイツのクラブへの移籍と五輪がモチベーションとなって、試合ごとに成長しているな、と感ずるほど伸びています。東も五輪に入ってからの成長株で、ケガの回復が心配されます。永井は誰もが認める成長株の筆頭。やはりケガの回復が心配です。

FW大津の存在も特筆されるほど、逞しくストライカーへと成長しています。

途中交代で出場した、斉藤、酒井高徳、宇佐美、もスタメンと変わらないプレーで存在感を示していました。

このチームの活躍は、これまでの試合で、失点0という数字に示されているように、GK,とDF,とMF(ボランチ)が一体になり、相互の連携と集中力にコントロールを維持し、相手の攻撃に時間と空間の余裕を与えないところに、成果が現れているようです。もちろん他のMFとFWの前線からのプレッシャーも、より防御を堅固にさせているのです。

攻撃に関しては、速いワンタッチにパウサを交え、長・中・短距離の正確なパスを横だけでなく、縦にもダイアゴナルにも、変化を入れ、永井のようなゴールが生まれているのです。セットプレーも見逃せません。それにバック同士の間合いを入れたパス(ただの時間稼ぎではありません)が、味方の選手をリフレッシュさせ、リズムを変え、相手を引き出す効果もあるわけです。

若い選手同士でプレーすると、どうしても一本調子になりがちで、ただ単にパス回しで終始してしまいがちになります。その点、吉田の間合いの取り方は絶妙です。

それが、チーム全体に落ち着きを与えているのです。もう一つ忘れてならないコトは、ドリブルで相手の守備網を突破するコトです。南米では、そのドリブルを、ラ・ガンベタ( La gambeta)と言います。それは、相手に囲まれていても、ドリブルで相手をヒラリと交わして抜き去るコトの意味です。

 きょうの相手メキシコは、日本のように世界のサッカーを混合させた、アグレッシブなスタイルで、しかも体型が似ていて、やり易そうでいて、実際には難しい対戦相手です。ぜひ勝って、男女揃って決勝に進出し、日本サッカー界のみならず、世界サッカー界の歴史に残る新しい記録を打ち立ててもらいたいですね。

 私たちもしっかり応援しましょう。

 「がんばれ! 日本サッカー」

 グラシアス! アスタ・ラ・プロクシマ

 お知らせ: 蜻蛉こと、竹嶋住夫のE-mail は、sumiotakeshima@yahoo.co.jp

2012年8月7日火曜日

ロンドン五輪サッカー観戦記(3)

こんにちは! 蜻蛉です。8月5日は、私の71歳の誕生日であり、昨年一時帰国で成田空港に着いた日です。
今回来日の目的は、南米ペルーで執筆した、蜻蛉ちゃんのサッカーの本、『土俗的忍者式サッカー』と『サッカー文化と異文化の内外相合』、の原稿を出版するコトでした。しかし、現実の日本はサッカーの本の乱立で、しかも時流に乗せた内容の本で、出版しても、流れに巻かれてしまう恐れがある、と判断しまして、これまで差し控えていましたら、アッという間に1年が経過してしまいました。
もしもある出版社で、この本の原稿に興味がありそうでしたら、私のメール(下記)にご連絡ください。お待ちしております。

 さて、ロンドン五輪サッカーで、日本は男女揃って準決勝進出という快挙を成し遂げてくれました。

この素晴らしい結果は、日本の男女が、お互いに良い意味でのライバル意識をもって戦ってきた相乗効果の顕れではないかと思います。

特に、なでしこの立場は、日本女子サッカーの今後の命運を握っていると言っても過言ではないほど、重責を担って戦っているはずです。

男子の選手にとっても、メダル獲得と2014年のW杯ブラジル大会のメンバーに選出されるチャンスが目の前にあるコトから、なお更、モチベーションが高まっていると思います。

コーチングスタッフにしても同様お互いに口には出しませんが、お先にサヨナラするわけにはいかない立場で戦っている様子がヒシヒシと感じられます。

 なでしこは、対ブラジル戦前までの問題(前回に記載)があって、不安な面がありました。特に、宮間と両サイドバックの近賀と鮫島、それにゴールゲッターの大儀見のプレーが低調気味で心配していましたので、この4人の回復がチームのカギを握っていると私は思っていました。

 幸いにも、鮫島の不用意なバックパスで一度危険な状況があった以外、4選手が平均的な(本来の)プレーでチームに貢献できていましたので、結果は2−0で、優勝候補の一角ブラジルに勝って、準決勝に進出をきめました。

 なでしこのスタメンは、GK福元、DF近賀、岩清水、熊谷、鮫島、MF阪口、沢、宮間、川澄、FW大野、大儀見。

 試合が始まって直ぐ大野がゴール前で相手より一瞬はやくボールに触りシュート。得点にはなりませんでしたが、日本にとって、幸先の良い兆しを示してくれました。

 やはりサッカー大国ブラジルは、高いレベルの技術で、エースのマルタを主軸にゲームを支配していました。しかし、何回か危険な状況もありましたが、GK福元、岩清水と熊谷のセンターバックを軸に、サイドの近賀と鮫島、それにMFボランチの阪口と沢がしっかりと機能していたので、ブラジルにシュートの余裕(時間と空間)を与えなかったコトが勝因の一つです。

 攻撃面では、わずかなチャンスを見事なコンビネーションプレーで、キチッと得点を決めたコトがもうひとつの勝因でした。

 そのお見事な得点の一つは沢と大儀見の素晴らしい判断から生まれたモノでした。左タッチライン際で相手の反則でFKを得て、大儀見が左タッチライン際から前に走り出しているのを見て、沢は間髪入れずに相手バックラインの裏側に相手の意表を突くパスを入れ、大儀見が走り抜け、単身ドリブルでゴール前に持ち込み、冷静に相手ゴールの右隅にシュートを決めた素晴らしいプレーでした。

 もう一つは、やはり左サイド鮫島からカウンター気味の縦パスが、ハーフラインを少し超えて、左タッチライン際にいた大儀見に渡り、大儀見は相手のマークをワンタッチのトラップで抜き去り、ワンタッチで、センターに位置していた大野に、絶妙なパスを通し、そのボールを受けた大野も、直ぐ右足ドリブルで前進し、相手のマークをフェイントを入れて左側に交わして、左足で豪快なシュート、ボールはバーの下に当たりネットを揺さぶる素晴らしい得点でした。

 なでしこは堅固な守備で、トップの2人が得点するという理想的なサッカーで、偉大なブラジルサッカーを倒しました。

 私がなでしこ式サッカーに魅力を感じたのは、選手一人一人がしっかりした技術で、サッカーをよく熟知(インテリジェンスの面)しているのに、驚いたからです。
 

私が理想としている日本サッカー像にもっとも近いプレーをゲームで展開してくれています。あの小さな体で、大きな外人に勝つには容易なコトではありません。中学生が大学生相手に試合しているよりもっと厳しいはずです。それだけ、現在の主力メンバーが如何に偉大な仕事をしているかが、その活躍度で証明しています。

 個別の選手のプレーで見ますと、GK福元は前の試合まで、ボールを手でキャッチせず、足や胴体で止めたりして、直ぐにパスしないコトを指摘しました。この試合ではしっかり手で取り、相手の際どいシュートをディフレクティング(手のひら)やフィスティング(こぶし)を駆使して素晴らしいプレーをしていました。また、絶えず味方プレーヤーにも指示し動かせていました。もし注文をつけるとしたら、キャッチしたら直ぐに攻撃の起点になるよう、前線にパスを出すよう心がけるコトです。相手は背が高く、当たりも強いからなお更です。もちろん時間を稼ぐ意味と味方の選手の体力回復とリズムを変えたい場合は別です。

DFの近賀は本来の攻撃リズムが蘇りだしたようです。岩清水と宮間と大野との連係プレーがようやく出てきました。岩清水と熊谷とのセンターバックは一段と安定感を示し、それが攻撃力に威力を増させているようです。特に、熊谷の前進守備はチームの攻守の大きな力になっています。鮫島も攻守のバランスがとれ、本来の鮫島らしさが現れていました。チョッとしたポカなプレーに注意するコトです。

MF阪口のプレーは男子の山口と同じように、ボランチとして素晴らしい機能を発揮しています。一段と大きく見えるほど逞しくなっています。沢はやはりチームのエースとしての感を取り戻しているようです。体力的にも心配なさそうです。宮間も前の試合まで低調でしたが、この試合では宮間らしさが出てきました。しかし彼女の実力はまだ発揮できていないようです。その分チームに貢献するプラスの可能性が期待できるわけです。川澄もカナダ戦での得点で見せたような、彼女らしい相手の守備をスパッと切るプレーが、まだそれ以後現れていませんので、逆に残り2試合で、その期待が持てるわけです。

FWの大野と大儀見は前回の対ブラジル戦で発揮してくれました。2大OO路線で、前線はお任せとなる活躍が期待できます。残りの試合でも、今の彼女たちだったら、必ず得点してくれると信じています。安藤と高瀬も2−0で勝っていたので、守備に力を注いでいたため、FWとしての攻撃の部分が発揮できなかったようです。

準決勝の対戦相手のフランスは、ラテン人気質の性格で、調子に乗ると驚異的な力を発揮しますが、チョッとぐらつかせれば、意外な脆さを暴露する弱点があります。五輪前のフランスでの試合は2−0で日本は負けましたが、フランスは地元では強いですが、外では地元でやるようなプレーは発揮していないようです(アメリカに2−0で勝っていて4−2で逆転負け)。反対にあの試合のなでしこは、時差ボケに加え、体のコンディションとチームとしての纏まりが欠けていたコトから考えれば、負けてもともと、上昇機運の出てきたなでしこサッカーは必ずフランスを崩せると、私は予想しております。

最悪の場合、双方の力とメダルをかけた試合で、延長戦に縺れ込むか、PK戦に持ち込まれる可能性も十分考えられます。

なでしこジャパンの幸運を願って、しっかり応援しましょう。

「がんばれ!なでしこジャパン」

グラシアス! アスタ・ラ・プロクシマ

蜻蛉ちゃんコト、竹嶋住夫のE-mail のお知らせ:sumiotakeshima@yahoo.co.jp

ロンドン五輪サッカー観戦記 (2)

こんにちは! 蜻蛉です。男子日本代表はホンジュラス代表と0−0で引き分け、堂々グループ戦1位で、決勝トーナメントに進出しました。一方なでしこジャパンは南アフリカに0−0で引き分け、グループ戦2位で、決勝トーナメントに進出したものの後味の悪い試合でした。内容はともかくとして、男・女揃ってグループ戦を突破してくれて、皆さんも大変喜んでおられることでしょう。

 さて、きょうは、女子なでしこジャパンの試合に関して話し合いたいと思います。私は昨年8月に、南米ペルーから一時帰国して以来、なでしこジャパンの試合を興味深く見守ってきました。
しかし、対南アフリカ戦前に、2位狙いの試合と控え選手中心で試合するコトが報道され、内心腹立たしく思っていました。

なぜならば、私は、なでしこの選手たちの純粋で直向きなプレーに感動し、これこそ日本サッカーのモデルになると思い、これまで動向を追跡していたからです。

日本の、対カナダと、対スウェーデン戦のスタートメンバーは:

GK福元、DF(右から)近賀、岩清水、熊谷、鮫島、MF(ボランチ)阪口、沢、(アタッカー)宮間、川澄、FW大野、大儀見。 

 カナダ戦での得点は、前半33分、左から沢がダイアゴナルの浮き球で大野にパス、大野はゴールラインを背にして右足でトラップしボールをキープしながら、川澄が外側からオーバーラップしてくるのに合わせて、足の裏で体の後方にパス、川澄はそのボールを受け、ドリブルで持ち込み、角度のない位置から右足でシュート、ボールはファーポストの内側のネットを揺さぶり、幸先の良い先取点を決めました。

この大野の間を置いたプレーこそ、私がこのブログでも主張しています、スペイン語で「パウサ」と呼ばれているプレーです。男子代表の試合でも、このパウサを入れてプレーしていたので、パスが正確で、メリハリがあって、選手一人一人の動きもプレーもスムーズに展開するようになっています。

2点目は前半33分、鮫島の左からゴール前へのクロスを、あいてGKの目測誤りもあって、宮間がヘッドで決め、前半2−0で終了。

後半、左サイドバックの鮫島のミスで相手に右からゴール前にアーリークロスを入れられ、ゴール前で、近賀がマークしていた相手にプッシュされ失点を許してしまいました。私が壮行試合でも心配していました鮫島のプレーによるエラーでした。

これら2試合において、全体的に、なでしこらしさが出ていたのは、対カナダ戦の前半30分以降の15分ぐらいで、サッカーで大事なクリエイティブな面が、まったくと言っていいほど、残りの時間帯に現れていなかったコトです。

個々のプレーで感じたコトは、

GKの福元は手を使わず、足や体でボールを止め、味方の攻撃にブレーキをかけ、相手に帰陣を許してしまう誤りを犯していました。(監督の指示?そうとは思えない)

DFの右サイドバック、近賀がまったく機能していないのはどういうコトなのか? 近賀流と監督に言わせた、攻撃的なプレーがまったくと言っていいほど見られないのはどうしてか?(監督が攻撃を封印したのだろう?)

センターバック岩清水と熊谷は守備としての機能をはたしていますが、特に気になりましたのは、右サイドの近賀にパスしないで、頻繁に左サイドバックの鮫島を使って、攻撃に参加させているのは、どういう意図なのか?(これも監督の指示?)

ボランチの阪口と沢は機能しはじめたようで、阪口のプレーが良くなってきています。そのお陰で沢が攻撃に絡む仕事が可能になっているようです。

さて問題は、キャプテン宮間の動きとプレーです。前の宮間と比べますと、パスの精度がガタ落ちで、ミスパスが多く、動きにも精彩を欠いているのはどうしてなのか?
 おそらくキャプテンとしての気苦労と体力的な疲れが出はじめているように思えてなりません。南アフリカ戦では、リズムに乗れないゲーム運びで、終いにはボランチでプレーしなければならないほど、チーム本来の力が機能せず、ジレンマ(ストレス)があるようにも見えました。

川澄はゴールを決めていますが、左サイドにへばりついて、以前のような大きな動きが見られないのはどうしてでしょうか? 大きな相手にマークされると、突破するのをきらい、切り替えしのプレーをしたり、内側にドリブルしたり、鮫島を前に走らせるだけで、それ以上のプレーをしようという態度が見られません。大野も単発では、よいプレーをしますが、ゴールを決めようという意志が足りません。

トップの大儀見は右サイドが機能していないため、相手にマークされ、味方の援護もなく、相手とのボールの奪い合いで、ゴールに絡む仕事ができないでいるようです。私が主張しているのは沢をボランチでなく、トップ下で仕事をさせるようにすれば、もっと得点力が増すようになるだろう、と私は考えていますが、皆さんはどう考えられますか?

対南アフリカ戦では、大胆にも、近賀、岩清水、熊谷、宮間以外、7人の控え組み全員出場させ、経験を積ませるコトと戦力になる選手を見極める、いわゆる、テストするコト、アメリカのグループを避けるためと移動の負担を回避する手段として2位狙いをするコトが、監督の考えのようでした。

残念なながら、選手に伝える前に、報道陣にもれてしまっていたのです。選手たちは知らずに、そのコトを報道陣から聞いて、驚き監督に直訴し、監督がその真相を選手たちに説明し、表面的には収まったようです。(戦略は公表すべきではない)

これまで佐々木監督の采配には好感をもっていました。しかし、沢のケガと目まい症あたりから、なんとなくチーム内に不協和音が鳴り出し、岩清水、宇津木のケガが重なり、監督としてかなり焦りがあったように思えてなりません。

対南アフリカ戦で選手たちは、サッカーの究極の目的であるゴールするコトを禁止されて、何をせよと指示したのでしょうか? パス回しに終始するつもりだったのでしょうか? もしJリーグだったらどうでしょう?間違いなく制裁を受けるはずです。規定では、ベストメンバーを組むコトと八百長まがいの試合は許されていないはずです。もし対戦相手がこの恩恵を受けたとしたらどうでしょう。事実スペインのW杯でドイツとオーストリアがこのような試合で両チームが決勝トーナメントに進む、屈辱的な問題があったのです。今回は五輪なのでFIFAは介入を避けているようで、特に制裁は受けないようです。

男子の日本対ホンジュラスの試合は、ロスタイムの2‾3分間、両チームが攻撃の姿勢を示さなかった以外、堂々と激しく好試合をやってくれたましたので、楽しく観戦できました。

五輪という大舞台で、どんな理由があるにせよ、高い金を払って試合を観戦してくれている観客に、このような試合を披露してよいのだろうか?

日本サッカー協会が「フェアプレー」を強化指針にまで、載せているのに、その張本人の日本代表がその精神を崩してまでメダルが欲しいののだろうか? 正直に言って、不愉快な気分です。

ブラジルを組み易しと、監督も選手たちも思っているようですが、ブラジルも日本に対して同じように思っているはずです。(ブラジルは次回のW杯と五輪の開催地ですよ)現在の調子では、なでしこの勝機は薄いようです。宮間、近賀、鮫島、それに大儀見がどれだけ回復するかが、なでしこ勝利のカギを握っている、と私は予想しています。

男子の対エジプト戦ですが、2002年の日韓W杯の決勝トーナメントに対戦したトルコと似たチームです。粘りのあるチームは特に警戒しなければなりません。

これまで出場した選手は誰でもが戦力になるコトをグループ戦で示してくれました。PK戦も考えられますので、準備万端、悔いのない試合をして、メダルを獲得してくれるよう、大いに期待しております。

「がんばれ! 日本サッカー」

グラシアス! アスタ・ラ・プロクシマ

お知らせ: 蜻蛉ちゃんこと竹嶋住夫のE-mailをお知らせします。

 

      sumiotakeshima@yahoo.co.jp

      前回、誤字がありましたので、訂正します。

      「彼(吉田)のリーダーとして的確な性格」と記しましたが、的確ではなく「適格」と訂正してください。また、「それほど恐れる相手ではないではない」を「それほど恐れる相手ではない」に訂正してください。

2012年8月2日木曜日

ロンドン五輪サッカー観戦記(1)

Kensuke Nagai of Japan clashes with Inigo Martinez of Spain during the Men's Football first round Group D Match of the London 2012 Olympic Games between Spain and Japan at Hampden Park on July 26, 2012 in Glasgow, Scotland.
こんにちは! 蜻蛉です。 日本国内は熱中症の被害者が続出するほどの猛暑にみまわれていますが、一方では、待望のロンドン五輪の幕が開かれ、日本サッカー界は、男・女のチームが揃って好スタートを切り、我々サッカーファンにとっては気持ちよく熱中させてくれています。おそらく皆さんは、時差ぼけで、体の調整に苦労されておられるのではと察しますが、本物の熱中症にかからないよう、お互いに注意しましょう。
 さて、きょうからロンドン五輪のサッカーを中心に、皆さんと話し合いたいと思います。とは言いましても、私の情報はテレビとインターネットから得たモノですから限度があります。できるだけ将来の日本サッカー界のためになるような知識を皆さんと共有していきたいと考えていますので、ぜひ皆さんの見方、感じ方、考え方もお知らせください。

 今回は日本代表男子の試合(第一戦の対スペインと第二戦の対モロッコ)を観戦して、感じたコトを話題にしたいと思います。

 五輪開幕前の下馬評ではスペインが金メダル候補のトップにあげられていました。しかし、五輪のスペイン代表は、欧州U-20のチャンピオンだそうですが、23歳以下の選手で、W杯やユーロでチャンピオンになった選手たちではありませんから、日本代表にとって、それほど恐れる相手ではない、と私なりに考えていました。

 日本人の間では、FIFAの世界ランキングで格が上とか下で評価したり、知名度(スペインには3選手欧州チャンピオンのメンバーが含まれている)で相手を見てしまう癖があるように思われます。

 今回のスペイン代表は、スタイルはトップチームと同じように、速いワンタッチのパスまわしでボールをキープしながら、試合の主導権を握り、相手に余裕を与えない作戦でしたが、中身の個々の選手は、イニエスタでもシャビ・エルナンデスのような経験者ではありません。現在のトップチームのスタイルは、現監督と選手たちの芸術作品ともいえるモノです。U-23にもこのスタイルが継承されていましても、完成品ではありません。(これが恐れる相手ではない理由の一つです)

 現在の日本サッカーのスタイルもスペインスタイルを追求しているようですが、日本選手の中身は、世界のサッカースタイルが含有されており、良い意味で個性になっています。同じスタイルのスペインですから、ある意味では相手のやり方は読めるのでは、と考えていました。

 試合が始まり、日本の選手は、実際に相手と接触してみると、試合前までに考えていたより、それほど恐れる相手ではないではない、と感じながら、自然と、自分自身にやれる、という自信と信頼感がわきあがり、それが自然に行動として、プレーに表現れていたようです。

 日本の選手にしてみれば、自分たちのモデルが目の前で見せてくれているのですから模倣するのは容易です。それらを吸収しだした日本は、相手のお株を奪ったかのように、「オーレ!」のパス回しでスペインを翻弄するプレーが随所に現れていました。対モロッコ戦では、前の試合以上に自信に満ちた正確なパスで、すばらしいゲーム展開をしていました。

 結果は2試合とも1−0ですが、シュート数も多く、失点が0という中身の濃いすばらしい内容の試合をしてくれました。

 この試合では、スペインと日本の差は、「心・技・体」で言えば、「心」の差にあったように思われます。私が考えている、未来の日本サッカーに導入しようと試みている「気功」で表現しますと、真の力は、頭で考える「心」からではなく、腹、すなわち、丹田から考える「心」でプレーするコトで発揮できるのです。少し分かりにくい表現ですが、前者がスペインで後者が日本だったというコトです。

 7月18日にて、壮行試合の対ニュージーランド戦の観戦記をこのブログにて載せましたが、次に記載するコトと照らし合わせながら読んで見てください。

 2試合のスタートメンバーはGK権田、DF酒井宏樹(酒井高徳)、鈴木、吉田、徳永、MF山口、扇原、清武、東、永井、FW大津でした。カッコは第2戦です。

 壮行試合と違うには、DFの山村を吉田にしただけです。しかし、オーバーエイジの吉田の加入は、チームの雰囲気をガラリと変える存在感を示してくれました。

 私は日本の宝という表現をしましたが、一方では彼の膝のケガが不安でした。幸いにも、万全の状態ではないようですが、ディフェンスラインがドッシリとしたゆとりのあるモノにしたコトが、攻撃にもゆとりがあらわれていました。それはシュート数とシュートの多様性で証明できます。

 吉田の存在は、前にサムライブルーでの本田の存在について述べましたように、キャプテンとしての統率力、彼のリーダーとして的確な性格、そしてチームにもっとも必要とするコミュニケーションをプレーを含めた行動力で、他の選手に信頼感を与え、チーム内の疎通がスムーズになったコトがピッチ上のプレーに顕著に現れだしているのです。

 個々の選手のプレーを取り上げてみますと、GK権田は一段と安定感を示し、対モロッコ戦で、同点ゴールを前進して体で防ぎ、その後吉田が足でクリアーしたプレーは賞賛に値します。

センターバックの鈴木も吉田と組んで守りの要の一人として存在感を現しています。サイドバックの宏樹はケガしましたが高徳が十分その穴を埋めてくれています。徳永も攻守にわたりオーバーエイジのプレーヤーとしての存在感を示しています。

MFのボランチ、山口と扇原はチームのモーターと私は表現しましたが、彼らが攻撃に絡むようなプレーをすれば、トップチームでも活躍できる存在であるコトを述べましたが、対モロッコ戦の山口のプレーは、シュートははずれましたが、日本サッカーに足りない意外性で即興的なプレーをしてくれました。もしゴールを決めていたら、大会後に世界のクラブからオッファーがくるはずです。それほどすばらしいプレーでした。扇原も正確なキックで、時折ゴールに絡むプレーをしています。それに、コーナーキックとフリーキックでもその存在感を現しています。

MFのアタッカー清武、東、永井は良いパスは出しますが、シュートが足りないコトを指摘しましたが、清武の対モロッコ戦での、GKのセーブでバーに当たったシュート、相手GKを引き出した永井へのパスが、決勝ゴールに繋がったように、彼の才能が現れだしてきているようです。東も縦横に動き、シュートにも絡むようになって来ています。もう少し大胆さが出るようになれば、トップ入りも十分可能性があるようです。永井は長いゴールへのトンネルを潜り抜けたかのような、すばらしいゴールを対モロッコ戦での決勝点をきめてくれました。彼の俊足は相手にとって脅威ですが、前の対スペイン戦でのシュート数を示しながら、決定力不足を暴露していましたが、この得点で、彼の心が、頭から抜け出し腹(丹田)から発せられれば、それこそ鬼に金棒で、世界へ羽ばたくプレーヤーになる、と期待できます。

ワントップの大津は、壮行試合ではタイミングの良いパスがこないで、イライラしていましたが、対スペイン戦でコーナーキックをズバリ決めてくれました。この得点は彼自身にもイライラを解消させただけでなく、彼自身の自信とチームの仲間に大きな自信を与えてくれました。(このゴールも幻のスペインのイメージを解消させた、二つ目の理由です)大津は対モロッコ戦でもすばらしいシュートをしています。それは、アタッカーの4人の動きがドリブルする仲間にスペースを作るための連動をしていたからです。

「サッカーは意外性の芸術」

と言われています。ボールが千変万化するように、あるときには予想外なコトが起こります。まだ先に試合がありますが、日本のメダル獲得も不可能どころか、女子のなでしこ以上に可能性が現れてきました。サッカーの決勝トーナメントは、日本では高校サッカーでも経験しているので、ある面では有利になるかもしれません。

 つぎのFIFA・W杯ブラジル大会の主力になると思われる選手たちの活躍を期待して、今後の試合に注目しましょう。

「がんばれ! 日本」

グラシアス! アスタ・ラ・プロクシマ